仏教童話

仏教童話『果実の味』

日付:2015年1月10日

172-16.jpgのサムネール画像
 むかし、バーラーナシーのみやこでブラフマダッタおうくにおさめていたときのこと。

 平和へいわ日々ひびつづいていましたが、おうこころれませんでした。というのは、まわりのものみなへつらってばかりいる生活せいかつにすっかり嫌気いやけがさしていたのでした。

 「わししかってくれるようなものいたいものだ」と、あるおもって放浪者ふろうしゃをやつしたびましたが、どんな辺鄙へんぴむらっても、出会であ人々ひとびとおうをほめたたえるばかりで、「これではみやこおなじではないか。ああ、められてばかりいるのはいやだ。」とさびしくつぶやきながらあるつづけました。

 そうするうちにふかもりっていきました。

 薄暗うすぐらもりなかあるまわったすえに、あるおいりにたどりきました。

 そこでは修行者しゅぎょうじゃ一人ひとりすずかに瞑想めいそうをしていました。おう修行者しゅぎょうじゃこえをかけると、修行者しゅぎょうじゃいて、たことのない果実かじつひとおうし、「これは、今日きょうもりなかからってきたニグローダのです。さあ、おべなさい」といました。 おうはおなかがすいていたので、すぐに一口ひとくち頬張ほおばりました。

 すると、それはとろけようなあじがしました。

 「なんておいしいだろう」とおうおもわずこえしました。

 行者ぎょうじゃが「果実かじつがおいしいのは王様おうさまただしく平等びょうどうくにおさめているからでしょう」とこたえると、おうは「行者ぎょうじゃさま、それではおうわるこころほうそむいてくにおさめると、ニグローダの果実かじつあまくならないのですか」とたずねました。
 
 修行者しゅぎょうじゃは「そのとおりですよ、たびのおかたおうやそのまわりのものたちがほうそむいて悪政あくせいおこうと、あらそごとえず、国中くにじゅうもの元気げんきうしなってしまいます。そして果実かじつなどもよくそだたず、甘味あまみうしなってしまいます。しかしおうただしくくにおさめると、国中くにじゅう活気かっきがあふれて果実かじつゆたかにみのり、甘味あまみすのです。」といました。 

 修行者しゅぎょうじゃれいべて、おうはバーラーナシーのみやこへとかえっていきました。

 おうしろもどると、またまわりのものたちのへつらいがはじまりました。

 しかしおうは、あの修行者しゅぎょうしゃ言葉ことばささえにしてくにおさめました。

 ところがあるとき不意ふいにある疑問ぎもんおうこころをかすめました。

 ―あの行者ぎょうじゃったことは本当ほんとうだろうか。ためしてみよう。 

 そのからおうひとちがったように威張いばらし、高慢こうまんい、しばらくってから、またふかもりかってたびたのでした。

 もりではあの修行者しゅぎょうじゃしずかにすわって修行しゅぎょうはげんでいました。

 おう姿すがたると、修行者しゅぎょうじゃなつかしげにおうまねれ、ふたたびニグローダの果実かじつしました。

 おうがそのくちにすると、「ああ、にがい」とおもわずさけんではきしてしまいました。

 これをつめていた修行者しゅぎょうじゃは「たびのおかたよ、そんなに果実かじつにがいのは、おうがひどい政治せいじおこなっているからでしょう」とってうたをとなえました。

  大河たいがわたる  うし
  その先頭せんとうの  一頭いっとう
  ななめにすすめば  れはみな
  おなじくななめに  すすむもの
  これとおなじく  ひと
  おさとなるべき  人間にんげん
  わる政治せいじを  おこなえば
  だれもまっすぐ  あるけない

 これをいたおう自分じぶんがこのくにおうであることをかし、修行者しゅぎょうじゃ言葉ことばうたがってためしたことを心からびたのでした。

 そして、「行者ぎょうじゃさま、これからは貴方あなた忠告ちゅうこくまもり、ニグローダの果実かじつがいつもあまくなるようにつとめましょう」と修行者しょぎょうじゃ約束やくそくし、しろかえっていきました。

 そして今度こんどこそまわりのものこころうごかされることなくしっかりとくにおさめたのでした。
(ジャータカ三三四)

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