仏教童話

仏教童話『山犬の呪文』

日付:2015年3月10日

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 むかし、バーラーナシーに一人ひとり司祭しさいがおりました。司祭しさいはひとたびとなえると何人なんびとをも降伏こうふくさせてしまうという不思議ふしぎ呪文じゅもんっていました。

 ある司祭しさいは、もしこの呪文じゅもんを、いましめをまもらぬおろかな人間にんげんかれたらかえしのつかないことになると、人気ひとけけてもりなかはいり、いしうえすわって、わすれないよう復唱ふくしょうしました。

 ところが、一匹いっぴき山犬やまいぬ司祭しさいとなえる呪文じゅもんあななかいており、すっかりおぼえてしまいました。山犬やまいぬあななかからてきて「この呪文じゅもんわたしほうがよくおぼえてしまったよ」というと、背中せなかけてっていきました。

 司祭しさいはすぐさまいかけましたが、山犬やまいぬもりおくへと素早すばやげてしまいました。山犬やまいぬはまずもりなか最初さいしょ出会であったうつくしいめす山犬やまいぬ呪文じゅもんとなえて味方みかたにし、それから森中もりじゅうひびわた大声おおごえでその呪文じゅもんとなえ、その威力いりょくで、ぞう、ライオンなどあらゆるけものたちが、たちまち山犬やまいぬ家来けらいになりました。
 
 そこで山犬やまいぬは、あのめす山犬やまいぬきさきくらいけ、二頭にとうぞう背中せなかにライオンがり、そのライオンの背中せなか山犬やまいぬおうきさきり、おおくのけものたちを見下みおろして、敬礼けいれいけました。

 すっかり得意とくいになった山犬やまいぬ慢心まんしんしてほどらずなことをかんがはじめました。

―よし、このいきおいにってバーラーナシーのくにってやろう。

 かれぞうとライオンのやぐらにったまま、みやこちかくまでやってきました。「さあ、くにわたせ。」と山犬やまいぬはバーラーナシーの国王こくおう使つかいをおくりました。

 まち人々ひとびとおそれおののいてみやこもんめ、恐怖きょうふのあまりふるえているなか司祭しさいおうに「王様おうさまおそれるにはびません。」とって、もんうえ物見台ものみだいのぼりました。

 そしててきおう見下みおろしてきました。

山犬やまいぬよ、おまえはどのような方法ほうほうでこの王国おうこくるつもりなのだ」

おしえてやろう。百獣ひゃくじゅうおうわれるライオンを大声おおごええさせて都中みやこじゅう人間にんげんどもをおびえさせ、おまえくに一気いっきってやるのだ」

「なるほど、なかなかいいかんがえだ」と司祭しさいまして物見台ものみだいからりると、「まめこなり、町中まちじゅうもの全員ぜんいんそれでみみをふさげ」とまわらせました。

 町中まちじゅう人々ひとびとみみあなった豆粉まめこむとなにこえなくなって、こころいてきました。

 それを司祭しさいはまた物見台ものみだいのぼっておなじことをいただすと、山犬やまいぬは「物覚ものおぼえのわる司祭しさいめ、よくくがいい。ライオンのさけごえ人々ひとびとをおびえさせ、一気いっきむのだ」とこたえましたが、今度こんど司祭しさいが「おろものめ、その作戦さくせん失敗しっぱいするぞ。けものなかおうわれるライオンが、おまえのようないぼれ山犬やまいぬ命令めいれいなどくわけがない」とかえしました。

 あたまのぼった山犬やまいぬおうは「なにうか司祭しさいいまこそおれ威力いりょくせてやるぞ」とって、自分じぶんっていたライオンのはらちからまかせにりました。ライオンはいままでだれいたことがないようなすさまじいこええました。ライオンのしたにいたぞう度肝どぎもかれ、おどろきのあまりそのおおきならしてライオンをおとしてしまいました。そのライオンにっていた山犬やまいぬ地面じめんにたたきつけられ、くるったぞうは、そのおおきくおもあし山犬やまいぬみつけ、たちまち粉々こなごなにしてしまいました。ほかぞうたちもライオンのこえにおびえ、あちこちまどいながらたがいにきばしあい、けものたちもあわてふためいて同士どうしちをしてそのんでしまいました。

 地面じめんにはけものにくやま見渡みわたかぎつづきました。

 司祭しさい物見台ものみだいからその様子ようすをじっとて、けものたちがみなんだのを見届みとどけると、だいからりてきてみやこもんかせ「さあ、みんなみみあな豆粉まめこりなさい」とい、全員ぜんいんまめこなえると、つづけて「にくしいものは、ってきなだけってきなさい」と人々ひとびといました。

 都中みやこじゅう人々ひとびとおも存分ぞんぶんにくってかえり、はらいっぱいべたのでした。

(ジャータカ二四一)

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