仏教童話

仏教童話『山犬とバラモン』

日付:2015年7月10日

 バーラーナシーのみやこまつりでにぎわっていました。

  このみやこながあいだ戦争せんそう天変地異てんぺんちいもなく、ゆたかかにさかえておりました。人々ひとびとおそろしい夜叉やしゃがこのみやこあらわれて平安へいあんみだされることのないよう、供物くもつそなえていのることをおこたりませんでした。まつりのにはとく高価こうかなものをそなえ、広場ひろば街角まちかどをはじめ、まち要所ようしょにはさかなにくなどのごちそうをまき、大鉢おおばちにはさけをなみなみとそそぎました。

 そのよるのこと、一匹いっぴき山犬やまいぬ下水口げすいこうつたって城内じょうないしのみ、夜叉やしゃへの供物くもつ手当てあたり次第しだいらし、大鉢おおばちなかさけすと、そのままぐっすりとねむってしまいました。山犬やまいぬましたときには、すでにたかのぼり、びっくりしてきましたが、こんなにあかるくなってしまっては、ひとつからずにしろそとすためにどうしようかかんがえていました。

 そのとき一人ひとりのバラモンそういずみかおあらいにやってくるのがえました。「そうだ、あのバラモンそうをうまくだましてしろそとのがれることにしよう。バラモンそうはおかねにはがないからな」とおもい、山犬やまいぬはバラモンそうちかづいていきました。

 バラモンそういずみ気持きもちよさそうにかおあらっていると、山犬やまいぬ小声こごえで「もしもし、バラモンさま」とはなしかけました。

 「わたしになにかようかね」

 「ええ、なさぶかいバラモンさまと見込みこんで、ひとつおねがいがあるのです。わたし二百金にひゃくきんのおかねっていますが、もし、バラモンさまがわたしを、上着うわぎかくしてだれにもつからないようしろそとしてくだされば、そのおかねをそっくりげます。いかがでしょう。」

 山犬やまいぬからはさけにおいがただよい、そのくちからはよだれがれていましたが、バラモンそう二百金にひゃくきんという高額こうがくのおかねこころうごきました。

 「いいとも、たやすいことだ。してやろう」

 山犬やまいぬはバラモンそう上着うわぎかくれて、まつりでにぎわまちなかとおけ、城門じょうもんをくぐり、うまく城外じょうがいのがれ、やっと薄暗うすぐら墓地ぼちまでやってきました。バラモンそう山犬やまいぬろし、「では、約束やくそくかねをもらおうか」といました。山犬やまいぬは、「それではここにあなたさま上着うわぎひろげてください」とって、バラモンそう上着うわぎがせると、今度こんどは、おおきなゆびさしました。

 「おかねは、このしためてあるのです。ここをってください。」

 バラモンそう一心いっしんあなはじめました。山犬やまいぬはそれを横目よこめると、にやりとわらい、バラモンそうひろげた上着うわぎうえに、ふん尿にょうをまきらしてはやしおく姿すがたしてしまいました。やがて、バラモンそう山犬やまいぬにだまされたことをり、地団駄じだんだんでくやしがりました。墓地ぼちはやし樹神じゅしんはこの様子ようすながめていましたが、やがてバラモンそうこえをかけてうたをとなえました。

 禁断きんだんの 
 さけれ あくをなし
 ひとあざむく 山犬やまいぬ
 おまえしんじた バラモンよ
 百枚ひゃくまい
 貝殻かいがらさえも いしころも
 つはずのない 山犬やまいぬ
 なんでとうか 二百金にひゃくきん 

 樹神じゅしんは「さあ、いずみって、上着うわぎあらいなさい。そして沐浴もくよくをしてからだきよめ、バラモンの修行しゅぎょうにつとめることです」とうと、どこへともなく姿すがたしてしまいました。

 バラモンそうふか自分じぶんじ、樹神じゅしん言葉ことばしたがいました。

(ジャータカ一一三より)

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