仏教童話

仏教童話『夜叉の森』

日付:2015年11月10日

177-16.jpg
  むかし、バーラーナシーのブラフマダッタおう王子おうじまれ、その顔立かおだちを祭司さいしが「ゆくゆくは王様おうさまあとがれ、いつつの武器ぶき使つか名人めいじんとしてそのをおげになり、将来しょうらい世界一せかいいち名君めいくんばれるにちがいありません。」と予言よげんし、王子おうじはパンチャーブダと名付なづけられました。これはいつつの武器ぶきものという意味いみでした。

 王子おうじ十六歳じゅうろくさいになると、おうめいで、ガンダーラこくにあるタッカシラーの高名こうみょう教師きょうしした様々さまざま勉学べんがくはげみました。五年ごねん月日つきひぎ、これ以上いじょう勉強べんきょうすることがないというところまで王子おうじまなえると、教師きょうし王子おうじいつつの武器ぶき手渡てわたしました。バラモンたちが予言よげんしたいつつの武器ぶきでした。王子おうじはそれをにつけると、タッカシラーを出発しゅっぱつしてなつかしい故郷こきょうへとかいました。
 あと一息ひといきでバーラーナシーのみやこまでて、手前てまえもりはいっていこうとした王子おうじむらひとに「このもりはいってはなりません。このもりには夜叉やしゃというおそろしいおにんでいるのです。夜叉やしゃ出会であったひと見境みさかいなくころしてしまいます。」とめられましたが、王子おうじ自分自身じぶんじしんいつつの武器ぶきしんじ、もりなかへとあしれたのでした。

 もりなかほどまですすんで夜叉やしゃ姿すがたあらわすと、王子おうじどくをつけたゆみにつがえ、夜叉やしゃかってはなちましたが、毒矢どくや夜叉やしゃからださらず夜叉やしゃについてしまい、毒矢どくやおおきなはらいのけた夜叉やしゃ王子おうじかってきました。

 王子おうじかたないて、夜叉やしゃってかかりましたが、そのかたな夜叉やしゃにくっついてしまいました。今度こんどはやりをってきかかっていきましたが、そのやりもやくちません。

 今度こんどはこんぼうにぎりしめてってでましたが、こんぼうもやはり夜叉やしゃについてしまいました。しかし王子おうじはひるむことなく夜叉やしゃまえ両手りょうてひろげてちはだかり、右手みぎてげて夜叉やしゃちかかりました。その右手みぎて夜叉やしゃにくっつき、あわてて左手ひだりてちましたが、これもられるかのようでした。そこで右足みぎあし左足ひだりあし交互こうごおもりましたがおなじこと。のこるのはあたまでした。夜叉やしゃからだ頭突ずつきをらわしたが、あたまもぴったりについてしまったのでした。

 すこしもおそれる様子ようすのない王子おうじ夜叉やしゃおどろき、「おまえころされることがこわくないのか」とたずねました。

 王子おうじは「人間にんげんにはかなら一度いちどがやってくるものだ。こわがる理由りゆうなど、どこにもない。わたしはらなかには黄金おうごんするどかたながあるのだ。このかたなはおまえはらなかきざんでおまえころすだろう。だからわたしがおまえべられるときにはおまえんでしまうことになる。」といました。はらなかかたなとは、こころなかひそんでいる知恵ちえかたなのことでした。

 感心かんしんした夜叉やしゃが「おまえにくいはしない。かえれ。」と解放かいほうすると、王子おうじこえつよめて夜叉やしゃいました。「おまえ前世ぜんせ悪事あくじおおかさねてきたから今世こんせでも人間にんげんにくらう夜叉やしゃとなってまれわってきたのだ。もしこれからも罪深つみぶか悪事あくじつづけるなら、やみなかまよつづけることになるだろう。ものころつみおかすと来世らいせでは地獄じごくちることになるのだ。」

 王子おうじにそうわれてはじめて自分じぶん前世ぜんせ来世らいせおもいやった夜叉やしゃ恐怖きょうふふるえ、どうすれば自分じぶんすくわれるのか、王子おうじおしえをうのでした。王子おうじいつつの悪事あくじおこなうとわるむくいがかえってくること、またいつつのいましめをまもると、よいむくいがかえってくることを説明せつめいしてかせました。夜叉やしゃこころあらためることを約束やくそくし、王子おうじころさない、むすまない、みだらなことをしない、うそをつかない、さけまないといういつつのいましめをおしさとしました。

 夜叉やしゃはこのいましめをよくまもり、もりかみとして供養くようけるようになりました。王子おうじ故郷こきょうのバーラーナシーにかえり、やがておうくらいくと、立派りっぱくにおさめたのでした。
(ジャータカ五五より)

カテゴリー:

  • 平成29年度(第30期)塾生
    「塾生募集のお知らせ」へ
  • 卒業後、それぞれのあゆみ
  • カリキュラムのご紹介
  • 機関誌「仏教文化」
  • 東京国際仏教塾20年の歩み
  • 塾生統計等
  • プレスリリース

東京国際仏教塾

新宿事務所 〒151-0053
東京都渋谷区代々木2-4-3
町屋事務所 〒116-0001
東京都荒川区町屋1-2-1-3F

TEL:03-3809-5930 FAX:03-3809-5935

ウェブからのお問い合わせ

このページの先頭へ