仏教童話

仏教童話『若きライオンの死』

日付:2016年1月10日


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  むかし、バーラーナシーのみやこからさほどとおくない原野げんやに、マノージャというわかおすライオンがいました。年老としおいた両親りょうしんいもうとつまとも洞窟どうくつみ、毎日まいにち原野げんやまわって水牛すいぎゅう鹿しかとらえてそのにくかえりました。ちちライオンは「ガンジスがわちかくにはけっしてあしれてはいけない。かわのほとりには人間にんげんたちのつくった牧場ぼくじょうがある。そこのうまつかまえれば人間にんげんたちをてきまわすことになるぞ。」とマノージャにっておりました。

 ところがあるのこと、マノージャは一頭いっとう鹿しかって、らぬにガンジスがわのほとりにあしれてしまいました。こうには牧場ぼくじょうさくつづいており、すぐかえそうとおもいましたが、そのさくしたには山犬やまいぬ仰向あおむけにころがっており、「うしあしさく隙間すきまはさんでしまいました。どうかたすけてください。たすけてくださいましたら貴方あなた家来けらいになりましょう。」とたすけをもとめました。マノージャはさく前足まえあしげ、たすけた山犬やまいぬれて洞窟どうくつかえってきました。

 山犬やまいぬちちライオンはかおくもらせていました。「山犬やまいぬ腹黒はらぐろけものだ。きっとおまえにろくでもないことをけしかけるだろう。したしくするのはよしたほうがいい。」しかし、マノージャはちち言葉ことばみみさず、毎日まいにちのように山犬やまいぬれて原野げんやまわり、りをしました。おかげで山犬やまいぬ毎日まいにちあたらしいにくにありつけました。

 あるのこと、山犬やまいぬうまにくべたくなり、「我々われわれはまだうまにくだけはべたことがありません。今日きょううまつかまえにいきましょう。かわのほとりにけば、今頃いまごろ岸辺きしべうまたちがあそんでいるはずです。」マノージャが原野げんやけ、ガンジスかわ岸辺きしべにつくと、数頭すうとううま水浴みずあびをたのしんでいました。かれはよくえた一頭いっとううま一撃いちげきころし、そのうま背負せおうと、ふたた原野げんやけ、洞窟どうくつまではこんでかえりました。

 ちちライオンはマノージャに「このうま人間にんげんおうものだ。人間にんげんおう稲妻いなずまよりもはやることの出来できゆみ名手めいしゅかかえているといううわさだ。おううまおそうのだけはよしなさい」と忠告ちゅうこくしましたが、マノージャは家族かぞく言葉ことばよりも山犬やまいぬ言葉ことば信用しんようするようになっていました。

 王宮おうきゅう馬番うまばんたちは、ライオンからうままもるために、川岸かわぎし牧場ぼくじょうからたかさくかこわれた馬場ばばうつしました。しかし、マノージャはそのさくひとびでえ、馬屋うまや一撃いちげきこわすと、なかにいるうまをさらってげました。みやこかれのうわさでもちきりになりました。おう王宮おうきゅう随一ずいいち射手しゃしゅしました。その射手しゃしゅ稲妻いなずまよりもはやることが出来できました。射手しゃしゅ馬屋うまやから数歩すうほはなれた場所ばしょさく見渡みわたせるやぐらをつくらせ、そのよるから、やぐらのうえひそかにマノージャをちました。

 そのよるもマノージャは月明つきあかりの原野げんや稲妻いなずまのようにけてガンジスがわ岸辺きしべました。そら満月まんげつ馬場ばばたかさくらしていました。おくれて岸辺きしべにたどりいた山犬やまいぬは、さく外側そとがわ墓地ぼちしげみでつことにしました。

 マノージャはひとびでさくえました。着地ちゃくちすると様子ようすをうかがい、馬場ばば一直線いっちょくせんけました。木戸きどやぶって馬屋うまやむと黒馬くろうまをひとみでころしました。黒馬くろうまにしてふたた馬場ばばけ、さくかっておおきく跳躍ちょうやくしました。その瞬間しゅんかん一本いっぽんし、マノージャのむね射抜いぬきました。かれ声高こえたかえると、さくこうの暗闇くらやみにどうとちました。そのこえいた山犬やまいぬはすべてがおしまいだとおもい、っていきました。

 一方いっぽう、マノージャは黒馬くろうまにしてながしながら原野げんやけていました。洞窟どうくつまえまで黒馬くろうま死骸しがい地面じめんろすとかれくずれるようにれ、ついに息絶いきたえました。その物音ものおといて、ちちははいもうとつま洞窟どうくつからてきました。マノージャの亡骸なきがらて、かれらは満月まんげつかってかなしげにえたのでした。

(ジャータカ三九七より)

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