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第3回エッセイ ひろさちや 「仏教で教える『幸福論』」

日付:2016年1月10日

 仏教は「幸福学」です。どうすればわたしたちは幸福になれるか、それを教えてくれているのが仏教です。

 では、どうすればわたしたちは幸福になれるでしょうか......?

 普通、人々は、欲望が充足されると幸福になれると思っています。
 
人間はいろんな欲望を持っています。金持ちになりたい。権力を得たい。名声を得たい。そして、そのような欲望が実現されると幸福になれる。たいていの人はそう思っています。
 
 でも、欲望が充たされて、それで幸せになれるでしょうか?

 そうではありません。

 たとえば、年収が一千万円になればいいと思っていた人が、実際に一千万円が得られるようになって、それで満足するでしょうか。彼はきっと、いや一千万円じゃ不満だ、やはり三千万円ぐらいないと......と考えるようになります。つまり、欲望が肥大するのです。早く課長になりたいと思っていた人が、実際に課長になれば、次には部長になりたいと思います。そういうものです。ということは、欲望が充足されれば、欲望そのものが増大するだけです。欲望の充足によっては、わたしたちは幸福になれません。

 そこで仏教からのアドヴァイス(助言)はこうなります。すなわち、あなたが、欲望を充足させることによって幸福になろうとするのは大まちがいだ。そうではなしに、

 ―少欲知足―
 こそが幸福への近道だ。あなたの欲望をほんの少し減らし、足るを知る心を持ったときに、あなたは幸福になれる。これが仏教の「幸福論」です。
 だからあなたは、あなたの欲望をちょっとだけ少なくしてください。そうするとあなたは、たちまち幸福になれます。仏教はあなたに、そのようにアドヴァイスをしてくれているのです。

     *

 と、わたしはこれまで、そのような説明をしていました。もちろん、これはこれでまちがいではありません。でも、考えてみたら、欲望を少なくするなんて、簡単なようで簡単ではありません。どうしたら欲望を減少させることができるか? その方法がなかなか見つかりません。

 そこで最近は、「少欲知足」の代りに、その反対の、

 ―大欲大楽―
 を提唱することにしています。これは、大欲によって得られる大楽こそが真の幸福である、ということです。

 でも、早合点しないでください。大欲というのは、でっかい欲望ではありません。

 普通、〝大〟は〝小〟の反対語として使われています。しかし、仏教においては、〝大〟は大も小もない、絶対的な意味での大なんです。

 そうですね、わたしたちは競争原理に支配されて、他人には負けたくないといった欲望を持っています。だから、他人が一億円を儲けると、自分は二億円を儲けたいと思う。そんな比較の上での大/小なんです。だが「大欲」というのは、そのような他人と比較しての欲望ではなしに、自分独自の欲望なんです。

 そして、その「大欲」の上に築かれるのが「大楽」です。これも、他人に勝った/負けたに関係なく、自分独自の絶対的幸福です。

 こんな話があります。ある男に神が、「おまえの欲望は何なりとかなえてやる」と言われました。しかし、一つだけ条件があります。それは隣家の主人に、おまえの望みの二倍を授けるというのです。おまえが一億円を望めば、隣りに二億円授ける。そういう条件がついています。

 するとその男は、神に質問しました。「では、わたしが不幸を望めば、隣りは二倍不幸になるのですか?」と。「その通りだ」と神は答えました。

 すると男は言いました。「では、わたしの片目を潰してください」と。

 彼の片目が潰れると、隣人の両目が潰れるわけです。

 わたしたちが他人を意識すると、せっかく幸福になれるチャンスを、わざわざ不幸になるように仕向けてしまいます。競争原理にもとづく欲望は、そうした性質を持っています。

 だから、わたしたちは、競争原理にもとづかない、自分独自の欲望、つまり「大欲」を持ちましょう。そして、その「大欲」の上で実現される「大楽」を楽しみましょう。そうすれば、たちまちあなたは幸福になれます。

 これが仏教の「幸福論」なんですよ。


プロフィール
ひろさちや
176-14.jpg撮影:児玉成一
1936年、大阪に生まれる。東京大学大学院人文科学研究科印度哲学専攻博士課程を修了。
気象大学校教授を経て、現在は大正大学客員教授。宗教評論家。
宗教が特別視され、疎んじられがちな日本にあって、仏教と日常の回路をつなぐ貴重な作業を続ける。
難解な用語を駆使する"思想家"が流行る現在、数少ない仏教啓蒙家。
著書には『こんな長寿に誰がした!』『人は死んでもまた会える』『〈法華経〉の世界』などがある。

カテゴリー:その他

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