仏教童話

仏教童話『火の中のハス』

日付:2016年7月10日

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 むかし、バーラーナシーのみやこ一人ひとり豪商ごうしょうんでおり、ことあるごとにほどこしをして、おおくのまずしいひとしたわれていました。

 あるとき一人ひとり深山しんざんはいって修行しゅぎょうはげんでいた辟支仏びゃくしぶつ尊称そんしょうされる修行者しゅぎょうしゃが、七日間なのかかん断食行だんじきぎょうえ、托鉢たくはつかけようとしていました。
 辟支仏びゃくしぶつ土鉢どばち両手りょうてち、しずかに呪文じゅもんとなえました。すると辟支仏びゃくしぶつからだは、そのままそらかびあがり、またたにバーラーナシーのみやこきました。
 豪商ごうしょうやかたではちょうど食事時しょくじどきえ、にわつくられたテーブルのうえに、召使めしつかいたちがごちそうをはこんでおり、やかた門前もんぜん布施堂ふせどうには、おおくのまずしい人々ひとびとむらがっています。辟支仏びゃくしぶつはごちそうのかおりにけられるように、すこしずつそらりていきました。
 やがて、豪商ごうしょう椅子いすすわろうとしてふとそらながめたとき一人ひとり辟支仏びゃくしぶつがこちらにちかづいてくるのがはいりました。豪商ごうしょうあわてて椅子いすからはなれると、わせて信従しんじゅうれいあらわし、「とうと辟支仏びゃくしぶつ托鉢たくはつられた。さあ、はやげるはちってきなさい。」とちかくの召使めしつかいにめいじました。
 一方いっぽう台所だいどころかげから悪魔あくま姿すがたあらわし、周囲しゅうい見回みまわすと、空中くうちゅう辟支仏びゃくしぶつて、「あの辟支仏びゃくしぶつは、七日間なのかかん断食行だんじきぎょうをしてきたはずだ。今日きょうもの布施ふせがなければ、餓死がしをするにちがいない。よし、いまから布施ふせ邪魔じゃまをしてやろう」と、からだふるわし、なにあやしげな呪文じゅもんとなえました。すると、中庭なかにわには巨大きょだいあなひらき、そのなかえだして庭一杯にわいっぱいひろがり、火炎地獄かえんじごくのようにさかりました。 はちっててきた召使めしつかいは、まえがる火柱ひばしらて、びっくりして「ご主人様ごしゅじんさま大変たいへんです。中庭なかにわうみです」とさけび、豪商ごうしょううしろをふりかえると、てんをもこががす火炎かえんがっています。
 豪商ごうしょううみをじっとながめると、「これは悪魔あくま仕組しくんだことにちがいない。わたし布施ふせ妨害ぼうがいするつもりだろう。わたしがひるむものではないことをせてやらねばならん」と自分じぶんはち両手りょうてち、さか火炎かえんかってあるいていき、ほのおのすぐちかくまでってうえると、あやしいもの姿すがたがありました。
 「なぜ、このようなことをするのだ」といかけると、「おまえ布施ふせ邪魔じゃまをするためだ。そうすれば、あの辟支仏びゃくしぶつえてぬはずだ」と悪魔あくま不気味ぶきみわらいながら、火炎かえんをあおぎつづけました。
 布施ふせ邪魔じゃまゆるすまいと「尊敬そんけいする辟支仏びゃくしぶつよ、わたしはこの火炎かえんなかはいって二度にどかえってこないでしょう。だが、わたしささげるこのものだけはおりください」とはち空中くうちゅうささげて豪商ごうしょうい、そのままさか火炎かえんなかはいっていきました。
 そのときでした。さか巨大きょだいあなそこから突然とつぜん噴水ふんすいがり、一本いっぽんうつくしいハスのはなあらわれて、豪商ごうしょうからだをすくいげました。豪商ごうしょうせたハスのはな空中くうちゅうたかがっていきました。そこには辟支仏びゃくしぶつがにこやかにけていました。豪商ごうしょうかがやかせてはちをささげ、次々つぎつぎもの辟支仏びゃくしぶつはちれました。いつしかそらにはおおきなにじがかかっていました。
 「あなたの生命いのちをかけた布施ふせは、なによりとうとい。ありがとう」
 辟支仏びゃくしぶつれいうと、そのままにじうえあるいてヒマラヤやまかえっていきました。悪魔あくま地団駄じだんだんでくやしがりましたが、どうすることもできませんでした。
(ジャータカ四〇引用)

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