仏教童話

仏教童話『夜叉の呪文』

日付:2016年11月10日

183-18-1.jpg むかし、あるもりおんな夜叉やしゃんでいました。夜叉やしゃとおりかかったバラモンをつかまえると洞穴どうくつめ、一緒いっしょらしているうちに、二人ふたりこころつうじるようになり、二人ふたりあいだにはおとこまれました。おとこはすくすく成長せいちょうしていきました。

 あるおとこ母親ははおや自分じぶんたちがどうしてちがうのかたずねると、父親ちちおや自分じぶんたちが人間にんげんで、母親ははおや夜叉やしゃなのだとおしえました。人間にんげん世界せかいげることを決意けついした息子むすこは、夜叉やしゃかえってくると、そのひざり、あまえた口調くちょうで「おかあさんの土地とちはどのくらいひろいの」とたずねました。息子むすこがかわいい夜叉やしゃ自分じぶん縄張なわばりがどこまでかくわしくはなしてしまいました。

 つぎ夜叉やしゃかけるのを見届みとどけると、彼女かのじょからのがれるために父子ふしいそいで洞穴どうくつました。もどった夜叉やしゃあたりをさがまわりましたが、縄張なわばりのそとにいる二人ふたりいつくことができず、夜叉やしゃは「人間にんげん世界せかいきなさい。けれども人間達にんげんたちなからしていくのになにちからっていないのはみじめです。呪文じゅもんおしえましょう。」と普通ふつう人間にんげんにはることが出来できない、過去かこ足跡あしあとえるようになる呪文じゅもんつたえると、かなしみのあまり息絶いきたえてしまいました。

 夜叉やしゃといえども一緒いっしょらしたことをおもえば、二人ふたりなみだせずにはいられず、もどって夜叉やしゃ手厚てあつほうむり、人々ひとびとまちへとかいました。

 足跡あしあと見極みきわめてあとをつけることの出来でき息子むすこ盗人ぬすっと足跡あしあと簡単かんたんさがしてつかまえることが出来できました。そのじゅつ評判ひょうばんになり、みやこてきたときにはおうされることになりました。

 このおうはわがままで欲深よくぶひとでした。息子むすこしろ前日ぜんじつおう司祭しさい相談そうだんしてしろくらから宝物たからものって、まちとおけ、ある溜池ためいけなかたからかくしたのでした。

 つぎ息子むすこしろにやってくると、おうしろからたからぬすされたので盗人ぬすっと足跡あしあといかけるようにめいじました。息子むすこくらまえち、じて呪文じゅもんとなえました。しばらくして息子むすこは「泥棒どろぼう足跡あしあとえてきました。やつらは二人組ふたりぐみようです」とって、地面じめんながらあるはじめ、やがて溜池ためいけまえまりました。息子むすこは「たから溜池ためいけなかにあるようです。」とべ、実際じっさいたからげられるとあつまった人々ひとびと感心かんしんして息子むすこをほめたたえました。

 しばらくして司祭しさいいました。「肝心かんじん泥棒どろぼうはどこにいるんだ」

 「そのもうげるのは...」

 「えぬというのか、もしやおまえがこのたからぬすんだのではあるまいな」とおう意地悪いじわる息子むすこせまりました。

 息子むすこが「かわみず人々ひとびとらしをうるおし、まもってくれるものです。国王こくおうみずおなじようにみなまもるものではないでしょうか。そのおうがなにか悪事あくじはたらいたとしたら、人々ひとびとはどうやってまもったらよいのでしょう」とうと、おうは「おまえはなしはよくからん。さあ、泥棒どろぼううのだ。」とどなり、人々ひとびとさわしました。

 「では仕方しかたがありません。本当ほんとうのことをもうしましょう。この足跡あしあとはここにおられる王様おうさま司祭様しさいさま足元あしもとつながっているのです。泥棒どろぼう王様おうさま司祭様しさいさまです。」とべる息子むすこ言葉ことばおう司祭しさい顔色かおいろわりました。

 それを人々ひとびと息子むすこ言葉ことばただしいのをさとりました。欲深よくぶかおう常々つねづね重税じゅうぜいしたり、土地とちげたりして人々ひとびとくるしめていました。

 そのためあつまっていた人々ひとびとこころにはうらみがくすぶっていました。そのうらみがこの一件いっけんをきっかけに爆発ばくはつし、人々ひとびとがっておう司祭しさいし、あと息子むすこおうくらいかせました。それ以来いらい、そのくにさかえ、人々ひとびとしあわせにらしたそうです。

(ジャータカ四三二より)

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