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修了レポート 浄土真宗 「平安浄土教から親鸞聖人に至る浄土念仏の流れ」

日付:2018年8月10日

第30期 金子 智和

 今日では、念仏と言うと口称念仏が主流となっているが、本来の念仏は仏教における行として仏様を想い(観想念仏)を含む広い意味を持っていた。では、念仏はどのように日本に定着し、浄土真宗での南無阿弥陀仏のご名号を唱える形となっていったのだろうか。浄土教の教え、現在の口称念仏のルーツは古くは中国の善導大師の影響を受けた法照にあるとされる。これを中国に留学していた天台宗の円仁が五台山念仏を導入したことにより、浄土思想と念仏が日本に入った。この当時の念仏は天台宗の四種三昧という行の一部で阿弥陀様を本尊として行う行であるものの、より音楽的で儀礼的要素が強いものであったという。浄土教の念仏という端緒という意味では、同じく平安時代の比叡山の僧侶であった源信の浄土信仰の勧めが重要である。死後に阿弥陀如来の来迎を受け、極楽浄土へ生まれることを願う教えを「往生要集」等により示した。この「往生要集」は浄土教での穢土・浄土世界観の紹介のみでなく、正修念仏を勧めている。初期の浄土教の念仏の始まりであるが、念仏と言っても口称念仏ではなく、阿弥陀様の観想する観想念仏であった。

 その後、十世紀にはいると、ようやく口称念仏が誕生する。「南無阿弥陀仏」の名号を唱えながら慈善事業を行い、民衆に幅広い帰依者を得たとされる空也上人である。空也上人により、浄土思想と口称念仏が結びついたという意味では空也上人が浄土教の念仏のルーツと見ることができるが、当時の念仏の主流は観想念仏であったとされる。この点、口称念仏の重要性を説いたとされるのが、良忍上人である。良忍上人は、毎朝西方に向かって十界一念、自他融通の浄土往生を期する念仏を十唱すること等を日課とした融通念仏を勧め、浄土教の一つである融通念仏宗を開いた。念仏による浄土への救済を唱える浄土教として、後に生まれる浄土宗開祖である法然上人、浄土真宗開祖である親鸞聖人にも大きな影響を与えたといわれる。

 良忍上人の約六十年後に法然上人により浄土宗が開かれる。浄土宗の教義は阿弥陀様による他力本願と専修念仏である。ただひたすら念仏を唱えることで阿弥陀様の本願の力により信心を獲得し極楽浄土、即ち悟りの境地へ至るというものである。即ち、浄土宗では、これまで多くの行の一つにすぎなかった念仏を唯一の行として位置付けたものである。浄土宗は念仏を最重要性なものにまで高め、阿弥陀様の他力を摂取するためには臨終の瞬間まで継続して念仏を唱え続けることを勧めている。

 そして、法然上人に学び、その教えを引き継ぎ、他力本願を教義としているのが浄土真宗を開いた親鸞聖人である。阿弥陀様の本願により救われるという点では浄土宗と浄土真宗は共通であるが、浄土真宗では、浄土宗と念仏の捉え方が異なる。先に述べた通り、浄土宗は念仏こそが救いの唯一の道と説くが、浄土真宗は絶対他力本願のもと、御仏の慈悲や救世の誓いである本願力をただ信じることを教義とし、信心さえ阿弥陀様から与えられたものであり、念仏を唱えようとした時点で既に阿弥陀様の本願による力が届いているため、口称念仏を条件としていない。念仏を口に出して行うのは御仏への感謝の念を示す行為であると捉えるのである。親鸞聖人は専修念仏により念仏を唱える行為自体が目的化してしまうことは本当の信仰ではないと考えられたのである。

 このように、平安時代から続く浄土信仰における念仏はその様式が大きく変わり、またその行為の役割・意味自体も各宗派の教義とともに変遷してきた。この変遷、即ち、初期の浄土教における念仏は行の一つであったが、浄土宗では唯一の行、浄土真宗では感謝の気持ちを表す行為と考えられるようになったのは他力本願という教えに深く関係していることがわかる。つまり、この念仏の役割・意味の変化は浄土系である各宗派の教義の違いをよく示している。

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