仏教童話

仏教童話『名前を探し歩いた少年』

日付:2019年4月10日

196-22.jpg むかし、タッカシラーのみやこ一人ひとりとくたか教師きょうしがいて、五百人ごひゃくにん弟子でしおしえをいていましたが、その弟子でしなかに『悪者わるもの』という名前なまえ少年しょうねんがおりました。

悪者わるもの、ちょっと用事ようじがあるからてくれないか」
「これをどうかんがえるかい、悪者わるものよ」

 その少年しょうねんひとから名前なまえわれるたびにおもくなりました、そこであるのこと、少年しょうねんのもとへって、名前なまええてもらうことにしました。

先生せんせいわたし自分じぶん名前なまえいやでなりません。ほか名前なまええていただけませんか」
「いいだろう、これからは国中くにじゅうあるまわって、自分じぶんった名前なまえさがしてきなさい。つかったらそれにえてあげよう」

 そこで、少年しょうねんたびることにしました。あるまちにたどりいたときことでした。ひつぎかついで墓場はかばかう人々ひとびとがやってきました。くなったひと名前なまえたずねると、『いのちあるもの』という名前なまえでした。

「『いのちあるもの』と名前なまえなのにんだのですか」
「そりゃそうさ。人間にんげんまれてくればかならぬさ。名前なまえなんてたんなる符牒ふちょうにすぎないからね。」

 少年しょうねんはそういうものかなとおもいながらあるしました。しばらくあるいていると、一人ひとりおんな荒縄あらなわなぐりつけているおことがいました。

「どうしたのですか、そんなひどいことをなさって...」
「このおんなわしからかねりてかえそうともしないのだ」

 そのひと名前なまえたずねると、おとこは「『宝守たからもり』という名前なまえだ」とこたえました。

彼女かのじょは『宝守たからもり』と名前なまえなのに、りたかねかえせないほど貧乏びんぼうなのですか」
名前なまえが『宝守たからもり』でも貧乏人びんぼうにん貧乏人びんぼうにんさ。そんなものは符牒ふちょうにすぎないからな」

 少年しょうねんはそこをはなれてしばらくくと、今度こんど途方とほうれた様子ようすあたりを見渡みわたひと出会であいました。

「どうなさったのですか」
たびをしているのですがみちまよってこまっております」

そこでそのひと名前なまえたずねると、『旅慣たびなれ』という名前なまえでした。

「『旅慣たびなれ』と名前なまえひとみちまよってしまうなんて」
名前なまえなんて関係かんけいないです。『旅慣たびなれ』と名前なまえでもみちまよいますよ。名前なまえなんて符牒ふちょうですからね」

 ここではじめて少年しょうねんはこのたび無駄むだなことをさとり、いそいで師匠ししょうところかえっていました。

先生せんせい名前なまえだけにとらわれていたわたしおろものでした。たとえ名前なまえがどうであろうとも、その名前なまえによって人間にんげんかたかんがかた左右さゆうされるということはありません。本当ほんとう大切たいせつなのは、名前なまえではなく、その人間にんげんがいかにただしくきるかということなのだとわかりました。」

 はその少年しょうねん姿すがたながめてつぎのようなうたをとなえました。
 
 いのちあるもの』が
 『宝守たからもり』がまずしくて
 みちまよった『旅慣たびれ』に
 った『悪者わるもの』が いた
 まどわされる おろかさに

(ジャータカ九七より)

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