仏教童話

仏教童話『魔法のびん』

日付:2019年8月10日

198-26.jpg むかし、ブラフマダッタおう(注1)がヴァーラーナシーのみやこくにおさめていたとき、このみやこ一人ひとり金持かねもち商人しょうにんがいました。

 この商人しょうにん人々ひとびとものほどこすなどの善行ぜんこうをいくつもかさねたため、やがてとしってむかえたとき帝釈天たいしゃくてん(注2)にまれわることができました。

 ところで、商人しょうにんには一人ひとり息子むすこがおりました。父親ちちおやくなったことで、その財産ざいさん息子むすこ自由じゆう使つかえることになりました。大酒おおざけみで、しかも横着者おうちゃくもの息子むすこにとって、おや財産ざいさん自由じゆう使つかえることほどうれしいことはありません。かれ毎日まいにちのようににぎやかなうたおどりにれ、あそびほうけました。大勢おおぜいきにかこまれ、さけおんなごと湯水ゆみずのようにかねをばらまきました。

 そうした生活せいかつかえしているうちに、かれ」父親ちちおやのこしてくれた沢山たくさん財産ざいさん使つかたしてしまいました。家具かぐ家財かざいをすっかりはらって、すってんてんの貧乏人びんぼうにんになった息子むすこは、ぼろをけて乞食こじきのような格好かっこうまちのあちこちをさまよいあるくようになりました。

 帝釈天たいしゃくてんちぶれた様子ようすかねて、はるばる天界てんかいからやってきました。そしてどんなのぞみでもかなえてくれる魔法まほうのびんをしました。

「もし、おまえがしっかりとこのびんをまもっていたら、財産ざいさんがなくなることはないんだよ。だから、絶対ぜったいにこのびんをこわさないように、しっかりとまもっていなさい」

 息子むすこにしながら、帝釈天たいしゃくてんである父親ちちおやはまた天上てんじょうっていきました。

 息子むすこ父親ちちおや愛情あいじょうをうれしくおもい、父親ちちおやってきてくれた魔法まほうのびんをしっかりまもっていこうと決心けっしんしました。

 しかし、息子むすこ魔法まほうのびんのおかげでまたおかねをいくらでもてるようになると、もとのようにさけんで、あそらすようになってしまったのでした。

 あるのこと、ぐでんぐでんにっぱらった息子むすこちちいましめをすっかりわすれて、魔法まほうのびんをお手玉てだまのようにほうげてはめるといったあそびをかえしておりましたが、ふとした拍子ひょうしでびんをとしてしまいました。

「あっ」

 おもわず、息子むすこさけびました。さけいもすっかりさめてしまいました。しかしあとまつり、びんは粉々こなごなこわれてしまったのでした。

 その息子むすこふたた乞食こじきのようなちぶれた生活せいかつもどってしまいました。そしてとうとうおとろえて、野垂のたにしてしまいました。

(ジャータカ二九一より)

(注1) ブラフマダッタ王:ジャータカを中心とする古い説話中にしばしば登場する架空の人物。ヴァーラーナシーを統治した慈悲深い王とされる場合が多い。

(注2) 帝釈天:仏教成立以前からインドに伝えられてきたヒンドゥー教の神インドラが、後に仏教の守護神として位置付けられたもの。世界の中央にそびえて、その山腹(天界)に神々が住むと伝えられている須弥山(スメール山)の頂上に住み、四天王を従えて、同じく天界の神、梵天と共に仏教を守るといわれている。

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