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修了レポート 浄土宗 「浄土宗の近代における信仰運動について」

日付:2019年8月10日

第三十一期 三澤 和雄

一、はじめに
 浄土教は仏陀の時代に直接起源を持たず、大乗仏教になってから新たに現れた教えである。

 大乗仏教の出現によって、仏教の開祖仏陀の思想を大胆に解釈しなおして、極楽浄土思想が生まれ、阿弥陀仏の出現となったのである。浄土教はインドから中国に伝わり、更に日本に伝播したのである。

 日本に伝来した浄土教は鎌倉時代に法然が出現したことで大きな展開を遂げたのである。

 浄土宗は法然の生存時代を純粋法然浄土教団とし、以後、高弟たちの分派開宗時代はあるものの基本的には中世浄土教の延長といえる。

二、浄土宗の近代における信仰運動
 幕藩体制の崩壊、廃仏毀釈の下、近代西欧文明の渡来により浄土宗の近代化、別の言い方をすれば浄土宗の大乗仏教化が始まったのである。近代仏教史理解の上で不可欠なのが、近世江戸期の仏教である。仏教は幕藩体制の中に組み込まれ、政治の末端機構として機能し、幕藩権力と結びつき、安逸と形式化に陥っていたのである。

 明治維新により、日本は西洋文化の影響を大きくうけ近代化を試みた。仏教界も例外でなく時代的変化が激しい近世から近代への転換は、浄土宗にとって大乗仏教化であった。

 中世には一貫して現世否定の思想動向、現世超越的傾向が強く生きている現実世界を厭い捨て、未来の彼岸にある阿弥陀浄土の理想世界への現世を目指す思想であった。

 しかし、近代はこのような思想に対して批判的であり、彼岸世界よりも現実世界そのものに究極の価値がおかれた、といえる。

 この思想を近代化することによって、浄土宗の近現代史で、その主流をなしたと考えられる二人の浄土宗侶に焦点を合わせて考えてみたい。

(一)、まず、山崎弁栄(一八五九~一九二〇)である。
 法然浄土教の近代化を試みた特筆すべき宗教家、山崎弁栄は、近代日本の胎動・誕生・発展の渦中にあって、法然上人の浄土教を近代的に再興し復活を企てた。

 具体的に考えてみると
ア、浄土宗の伝統的手法、信仰や宗学が形骸化していると感じ、それらの在り方を、法然の真の精神に立ち返って超克しようとした。
イ、法然浄土教の本質を追及し、その根源に還った結果、開祖仏陀と同じ地平に舞い降りたのである。すなわち、自らの念仏三昧の内証と世界が仏陀の覚りとの同一性を確認したのである。
ウ、阿弥陀仏とキリストの神は同体の異名であり「仏」と「神」の区別さえ意味をなさない世界であると、宗教の普遍性へと歩みを進めたことである。

 宗教の普遍性への歩みは山崎の教学ともいえる「光明主義」であり、その同信同行の集まりである「光明会」の主唱者でもあった。法然浄土教の枠を超えて大乗仏教へ、そして大乗仏教を超えて、仏陀の宗教へ直結していったのである。

 法然浄土教を大胆に、現代的に脱皮させた山崎の功績は評価されるべきである。

(二)、次は、社会的活動面では刮目すべき活躍を果たした椎尾弁匡(一八七六―一九七一)である。椎尾弁匡は「共生」という言葉に、宗教哲学的概念を与え、思想運動の徴表としたものである。椎尾の思想は以下に総括される。
ア、仏教、特に浄土教に基盤を置きつつ、第一に人間がその本来の在り方に目覚めるべきこと。
イ、人間がありとあらゆる、生きとし生けるものとの平等の共生、また自然との共生にたつべきこと。
ウ、理想世界として共生浄土の実現を目指すべきこと。

 浄土宗の伝統的宗義である未来往生の教えから、現実の世界に「共生極楽」という理想世界を築き、その実現をもたらすところに、念仏の意義を見出している。
 また「共生」思想は浄土宗内に「浄土宗義の現代化」を廻る議論を促し、宗外においては仏教的「共生」への拡がりをみせたことは評価されるべきである。

 山崎の「光明主義」と椎尾の「共生主義」は、近代における浄土宗の教学、教化の代表的運動であるが、両者は極めて対象的である。

 「光明主義」が個人の念仏体験を重視したのに対し「共生主義」は、念仏に基づく社会的生活に重点を置いている。
 仏教は苦からの解脱を目ざす宗教だ。苦からの解脱の方法は、その時代性と地域性とを意識して、時機相応化する必要がある。

 だから、時代とともに教法が変化するのは必要であって、大乗仏教自体が時機的相応の教えである。

 平安末期から鎌倉初期にかけて浄土教は、末法を強く意識して教えを説いた。明治以降はほとんど末法が意識されず、それに代わって西洋から将来された、社会的思考に基づいて浄土教が理解されていることからも首肯されよう。

 浄土宗を近代化した二人の示した道には、宗学を超越し、新たな教義体系を創出したのであって、現代の課題に必ず応答しうる、日本仏教の未来があるものと考える。

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