初心

「初発心」に続けて初心のことにも触れたいと思います。日本人が真っ先に浮かぶ初心は、世阿弥の「初心忘るべからず」ではないでしょうか。この初心を、世阿弥は世界初の演劇書『風姿花伝』の第一章「年来稽古條々」で詳細に書いています。24、5歳のころの力と若さがみなぎっている時の初心。34、5歳のころの、進むべき道を選ぶ意志をもった頃の初心。そして50有余の老いたときには、歳を重ねてこそ許される自由の境地という初心。人生には、初心が三つあることが紹介されています。世阿弥にとっては「一番の初心の上に、その時その時の初心があるのだよ」といっているように思えます。
能の演者に説く『風姿花伝』を自分自身に置き換えてみると、24、5歳のころは怖いモノなし!「初心」の実現に向けて、脇目もふらずまっしぐらに行ったような記憶が…。34、5歳の頃は? 中年の域に片足を突っ込みながら、仕事も少しは結果を出しつつ、さて次は何に挑戦するかと過ごしていたような…。では、老年と呼ばれる年齢にさしかかったときはどうでしょう。このままでいいのだろうか、これから何を成すべきかの疑問の日々。
今は現代語訳も出ています。自分自身を考える上で『風姿花伝』に時間を割り振ってみませんか? 今の「初心」に、何かヒントが読み取れるかもしれません。

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