今さらながら読む『武士道』

新渡戸稲造著の『武士道』。かつて英語で読まされ、辟易した覚えがあります。時代が変わると翻訳本を読めるようになりました。改めて読み直すと現代にも通じる話が盛りだくさん。涙するシーンすらあります。
新渡戸が書いたのは1899(明治32)年。アメリカ滞在中にカリフォルニア州で病気療養中、日本という国を俯瞰したことが契機になったといわれています。外国人から当時の日本は「幼稚な文明と好戦的な国」と見られていました。第一版の序文の冒頭に気になる文面が述べられています。ベルギーの著名な法学者から「日本に宗教教育がない!どうやって(子供たちに)道徳教育を授けるのだ」と言われ、返事に窮するシーンです。宗教教育が道徳の道しるべとなる海外の人からは、教えるべき宗教がないだけで、日本人は道徳心を持たない野蛮な人種に見えたのでしょう。「いやいや違う!」と、『BUSHIDO The Soul of Japan』が産声を上げたようです。
明治から令和と進んだ今、宗教はおろか、墓すら必要ない風潮があります。火葬場での直葬や一日葬が増えてきましたし、その場に僧侶は呼ばない、経も唱えないという流れもあります。そんな時代だからこそ、この本に目をやる意味があるのではないでしょうか。
「このままでいいのか」という疑問がふと頭をよぎったとき、新渡戸が世界中に伝えた日本人像、そして現在の日本人の姿、弱点が透けて見えてくるように思います。

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