壁を越えて

1989年11月、ベルリンの壁が崩壊しました。ブランデンブルグ門には約2万人の東西ドイツ国民が押し寄せ、「越えられない物」「代えられない物」が変わる瞬間を見届けたのです。
その約2年前、ロック歌手、デビッド・ボウイが旧・西ドイツの国会議事堂前会場でコンサートを開きました。その際、4つの巨大スピーカーのうちのひとつをブランデンブルグ門の内側、東ベルリンの市民に向けたのです。その歌声がきっかけで、東ドイツの民主化へのデモは加速しました。彼の行為には理由があったのです。それはアメリカ在住の時にドラッグとアルコールに溺れ、西ドイツへ引っ越したときは廃人同様の状態。しかし、ベルリンの人々は優しく向かえ、接したのです。彼は自分自身の心の壁を越えることができました。それに恩義を感じていたからだと言われています。
お釈迦様がまだゴーダマ・シダッタという名の王子だった時代。出家しようとしながらも、しがらみから抜け出せず、何度も立ち止まるシーンがあります。沙門となったのち、ウルヴェーラーの苦行林で6年間、たとえば断食行、止息行など、どんなに頑張っても、自身が求める答えにたどり着けないこともありました。これも壁といってもいいかもしれません。
日本仏教の宗派の宗祖、開祖と呼ばれる方々も、順風満帆な道を歩んできたわけではありません。彼らの人生にも、避けたいこと、逃げたいこと、さまざまな試練が待ち受けていました。それでも、その壁を、ひとつひとつ乗り越えています。
壁は避けたいし、ない方がいいかもしれません。しかし乗り越えた、その先にあるもの。これを見ること、経験することで人生は変わることがあると思ってはいかがでしょう。

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旧・西ベルリン側から見たブランデブルグ門。

ベルリンの壁も、今はアートスペースに。