キジル石窟第38窟

真実

菩薩は一語のなかに能く一切の語を説き
一法のなかに能く一切の法を説く
説く所は皆是れ実 皆是れ真なり

鳩摩羅什訳(大智度論)

写真は…
キジル石窟が開鑿された地は、古代亀茲国にあり、古来より仏教が盛んで多くの仏教僧が集まっていた。鳩摩羅什三蔵法師はその亀茲国で生まれた。インドに留学して小乗仏教を究め、帰途大乗仏教に回心して亀茲へ帰っている。そしてこの地で師が広めたのが大乗仏教である。大仏像や千仏画、廬舎那仏壁画等はその盛行を物語っている。
キジル石窟はラピスラズリを用いた美しい青色をした壁画が特徴であるが、18〜19世紀にヨーロッパ諸国の調査隊によっていくつもの壁画が切り取って持ち去られてしまった。さらに、イスラム教徒による破壊を受け、非常に痛ましい姿をした窟が多いのが現状である。調査隊によりヨーロッパへ持ち出された壁画は、世界大戦の影響を受けつつも、保管状態が良くその美しさを留めている。本図は、ドイツのグリュンヴェーデルによって切り取られたと思われ、その傷跡が生々しい。
(撮影大洞龍明/2008年)
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