なにをどう選ぶ…②

先週アップした続き、第2回目の「なにをどう選ぶ…」のコラムとなります。

 【天皇、将軍もくじ引きで】

こんな競争や他人の評価に身を任せない公平で手軽な選抜方法が昔から盛んに行われていました。もったいを付けましたが、くじ引き(抽籤)、サイコロ、じゃんけんです。引く人の能力や属性などに関係なく、確率的にも差がない平等な選抜方式です。運任せで無責任、遊びならいいが大事な決定には…と軽く見られがちですが、鎌倉時代の第八十八代後嵯峨天皇や室町時代の第六代足利義教将軍はくじ引きで選ばれました。現在の議員選挙でも立候補者の届け出順はくじ引きですし、開票して得票が同数の時はくじ引きで当選者を決めます。挙げていくとキリがないので、仏教絡みのものを見ていきたいと思います。
まずはくじ引きの籤(くじ)の由来からです。くじで思いつくのは「おみくじ」です。「くじ」に尊敬・丁寧の接頭辞の「お・み」を付けた言葉で、仏様や神様のご意向をうかがい公平な決定をする行事でした。今でも新年にその年の吉凶や豊作、景気をくじで聞く神事が多くの神社で行われています。
初詣などで引くおみくじの始まりは江戸時代です。上野の寛永寺の天海大僧正の夢枕に第十八代天台座主の良源上人が立ち「信州戸隠山明神にある観音百籤(観音様の百のお告げ)を引いて吉凶禍福を衆生に知らせて利益せよ」と告げたのが始まりです。観音様の次は阿弥陀様、「あみだくじ」です。今の阿弥陀くじはハシゴのような線を何本か引いていますが、元は放射線を円形に描き、中心部に当たりや金額などを書いて伏せ、それを外側から当てました。その形が阿弥陀如来の光背に似ているので阿弥陀くじと呼ばれました。
その次が「富くじ」。今の宝くじの起源です。これも始まりは江戸時代。寺院・神社修復の普請費用の捻出のために始まりました。「富突き」ともいい、箱の中の木札をキリで突いて同じ番号札の人が褒美金をもらい、褒美金と費用を差し引いた残りが興行主の寺社に入る仕組みで、褒美金から冥加金を奉納させることもありました。富くじは欲の絡んだ賭博ということで、明治時代になって刑法で禁止され、政府管掌の宝くじになりました。   -つづく-

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