沖縄の「エイサーと仏教」⑤

東京国際仏教塾卒塾生の並木浩一さんによる書き下ろしエッセイを連載でお届けします。今回はその5回目です。

青年会がエイサーを継承する

沖縄は本土(内地)と比べて、仏教寺院の数は非常にすくないと言えます。そうした中で、念仏踊りをルーツとするエイサーはどうやって継承されてきたのでしょうか。その秘密が「青年会」の存在です。伝統的なエイサーを継承しているのは、徒弟制でも家元制度でもなく、サークルでもなく、各地の地区の青年会なのです。
沖縄では自分の地元のことを「我ったーシマ(わったーしま)」とよく表現します。島ではなくシマは、集落と学校区が重なった地区であり、コミュニティの単位として沖縄では重要な表現です。そしてそのシマには間違いなく「青年会」があります。逆にいえば、ひとつの青年会を持つエリアが、ひとつのシマと言ってもいいかもしれません。
そしてその青年会の多くにとって最重要の活動が、エイサーの実施なのです。年に1度の旧盆に向けて、遅くとも春先から、エイサーの練習が開始されます。練習場所は地区の公民館であったり、学校の体育館であったりします。10代から20代の男女が心を合わせる求心力がエイサーなのです。専門技能を必要とする地謡を除いて、エイサーの踊り手は一定の年齢が来ると引退するのが不文律です。踊っているのは、ほとんどが未婚の男女です。毎年入れ替わっていき、常に若い青年会のメンバーが、絶えることなくエイサーを守っていくのです。  -つづく-

Profile:並木浩一(なみきこういち)
1961年横浜生まれ。桐蔭横浜大学教授。時計ジャーナリスト。ダイヤモンド社「ダイヤモンド・エグゼクティブ」「TVステーション」両誌編集長、編集委員を経て大同大学教授(メディア論・芸術論)、2012年より現職。編集者時代に東京国際仏教塾9期入塾、「仏教を学ぶと、生きるのが怖くなくなる」と実感し、専門課程を経て浄土真宗で得度。「沖縄のエイサーと念仏」についても研究中。

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写真提供/沖縄県名護市観光協会