明るい来年へ

阿弥陀様が「すべてを救う」と両手を広げてくださるような姿、名工が手がけた仏像のような眼差しを浮かべた作品に出合いました。それは、東京藝術大学博物で開かれていた2021年度博士審査展でのこと。日本国内に留まらず海外の美術館からも注目される金工作家、高橋賢悟さんの作品です。
彼の作品に出合ったのは数年前。アルミニウムで象られたスカルに、同素材の花々が載せられたものです。そのユニークな作風は、3.11の東日本大震災をきっかけに誕生し、テーマに死生観があったと知るのはずっとあと。むしろ、今回の作品を拝見したからこそ、理解できたといっても過言ではありません。
衝撃を受けた作品のテーマは、これまでの死生観の先を見据えた「祈り」です。彼のFacebookには「今がどんなにネガティブな感情に満たされていても、祈る行為は強制的な未来志向となり、自然とポジティブな感情へ変換する力があると考えました」と書かれていました。
コロナ禍の2年近く、沈みがちな日々を過している方も多いかもしれません。立ちはだかる壁を前にため息を、いつまでも続く上り坂に眩暈(げんうん)を、そんな方もいらっしゃるでしょう。しかし、明けない夜はありません。壁は崩れ、坂は登り切れるのです。その確信を、この作品を前に得ることができました。
みなさまにとって、来年は素晴らしい年になりますように。その祈りを込めて、2021年12月31日のコラムといたします。

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作品「Re:pray」

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