沖縄の「エイサーと仏教」⑥
東京国際仏教塾卒塾生の並木浩一さんによる書き下ろしエッセイを連載でお届けします。今回はその6回目です。
念仏するエイサー
念仏するエイサーを実際に見ることは、なかなか難しいかもしれません。それは念仏するエイサーが見つけられないからではなく、その習慣が大方のエイサーからなくなってしまっているからです。エイサーが伝承されていく中で、念仏踊りの要素はどちらかというと忘れ去られ、演舞の面が強調されてきたことは否めません。
しかしながら、今も念仏をエイサーの中に頑なに守っている青年会もあります。エイサーの一連の演舞の番最初の曲として一番ポピュラーな曲は「仲順流れ」ですけれども、青年会によっては、これを「念仏踊り」と呼んだり、またはそのものズバリの「エイサー」という呼び方をすることもあります。その、エイサーそのものであるところの「仲順流れ」は、冒頭に念仏を唱えてから始まるのが決まりごとでした。
その習わしを守る青年会では、「仲順流れ」の冒頭に「南無阿弥陀仏」の六字名号を唱えます。沖縄方言(ウチナーグチ)的な発音で「なむあむだんぶちー」というような聞こえ方がする念仏が最初にあり、それに印象的な三線のリフレインと囃子が続きます。こういう正嫡のエイサーを見、聞くにつけ、沖縄で長い歴史を経てきた念仏、そして仏教を底流に持つ、ひとつの文化的な痕跡を感じます。 -つづく-
Profile:並木浩一(なみきこういち)
1961年横浜生まれ。桐蔭横浜大学教授。時計ジャーナリスト。ダイヤモンド社「ダイヤモンド・エグゼクティブ」「TVステーション」両誌編集長、編集委員を経て大同大学教授(メディア論・芸術論)、2012年より現職。編集者時代に東京国際仏教塾9期入塾、「仏教を学ぶと、生きるのが怖くなくなる」と実感し、専門課程を経て浄土真宗で得度。「沖縄のエイサーと念仏」についても研究中。
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