だれも一緒に来てくれない「無一随者」③

三人の妻】

それは『雑阿含経』にある譬え話です。インドのある町で、三人の妻と楽しく暮らす大金持ちの商人がいました。一番可愛がっていたのが第一夫人。いつも一緒に居て、暑さ寒さに気を配り、好き放題に贅沢をさせてやりました。第二夫人は他人と争って手に入れた女性で、外出するときは一緒に連れ出し、家では鍵のかかる部屋に入れて守るほど大事にしていました。第三夫人はべったりではないが、時々会っては一緒に喜んだり慰め合ったりの親しい仲でした。

この男がはるか遠いところに旅立つことになりました。戻ってくることはありません。一人で行くのは寂しいので第一夫人を呼んで一緒に行ってくれるよう頼みます。第一夫人は涙を流し、いろいろお世話になりましたので何でもして差し上げたいのですが、そんなに遠いところに行くことは出来ません、と断ります。ガッカリして第二夫人に頼みますが、第一夫人に出来ないことを第二の私が出来るわけはありません。もともとあなたが勝手に私を求めたのであって私があなたを求めたのではありませんから、と断ります。第三夫人には、町の境まではお見送りしますが、その先は一緒に行くことは出来ません、と断られます。こんなに大事にしていたのに、いざという時には誰も随いて来ない、哀れで可哀そうですが、私には同情の念は起きません。やっかみですかね。

お釈迦様はこの話を何に譬えて説かれたのでしょう。

次回は9月16日(金)にお届けします。

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