仏教の宇宙観

インドで生まれた仏教には、インド人の宇宙観が取り入れられています。
世界の中心には、梵天や帝釈天などの神々や天人の住む須弥山(シュメール山)が高くそびえ(高さ100万km以上)、それを取り巻く九つの海に四つの大陸(四大洲)が浮かび、その一つの閻浮提(えんぶだい)が人間の住むところです。太陽と月もこの世界の中に含まれています。

この須弥山を中心とした世界(須弥山世界)を一つの世界と数え、それが千個集まったものが「小千世界」、それが千個集まったものが「中千世界」、その中千世界がされに千個集まったものを「大千世界」といいます。三つの千世界が階層構造になっていることから「三千大千世界」ともいいます。ここで、千という数は具体的な数ではなく、無数のものを表しています。世界が無数のものからなる多層構造になっているということを示しています。

この三千大千世界は、一人の仏様が教化できる範囲であって、「仏国土」とも呼ばれます。お経の中では、このような三千大千世界が、ガンジス川の砂の数ほどに存在すると述べられています。我々の想像を遙かに超える壮大なスケール感です。

このインド発の宇宙観は、現在の科学が示す宇宙の構造に驚くほど似ています。須弥山を中心とした世界が太陽を中心とした太陽系の規模だと考えると、太陽と同じような星が集まってできている「銀河」が小千世界ともいえます。我々の銀河(天の川銀河)には約二千億の恒星が存在しています。

この銀河が数百から数万個集まって存在しているものを「銀河団」といいます。これは中千世界にあたります。その銀河団がさらに大規模な構造をとって、「宇宙」が構成されています。この宇宙全体が三千大千世界にあたります。

三千大千世界にあたる宇宙が、他にも無数にあるということがあるのでしょうか?
現代の宇宙論では、我々の宇宙の他に無数の宇宙が存在し、今も次々と生まれ続けているという「マルチバース宇宙論」が提唱されています。この理論はまだ仮説の段階ですが、ガンジス川の砂の数ほどの三千大千世界が存在するという仏教の宇宙観には、我々の宇宙以外に無数に宇宙が存在するということも織り込まれているのでしょうか?

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