縁起の道理を通して世界を見れば
お釈迦様の悟りの内容は完全には解明されていませんが、「縁起の道理」をご覧になったとされています。縁起の道理とは、すべてのものは因果の関わり合い(縁)の中で存在していて、独立して存在しているものは何もないということを表しています。そして、私たちが存在していると思っているものは、さまざまな縁が一時的に集まって現れた(起こった)ものに過ぎないと説かれます。
この縁起の道理を通して世界をみれば、あらゆるものは関わり合いの中で移ろいゆき(諸行無常)、永遠に存在しつづける実体はない(諸法無我)、ということになります。そして、今まで厳然と存在すると考えていた「私」や「世界」が、実は諸行無常であり、諸法無我であることに気がつくと、自分がこだわっている人間世界の価値(地位や名誉、財産など)は、移ろいゆく仮のものであり、執着する必要が無いものであると知らされます。
そして、死や病気、老い、愛する人との別れなどに代表されるような決して自分の思い通りにならないことを思い通りにしたいという執着が自分を苦しめており、そこから解放されることが本当の心の安らぎ(涅槃寂静)につながることを教えてくれます。
また、自分の命は、無常であり無我であると同時に、友人や同僚、家族、動物、植物、そして山、川、海、森などの自然と関わり合い、それらに支えられている「生かされている命」であるということにも気がつきます。
このように、縁起の道理というありのままの真理を見極めることが仏の悟りであり、仏の「智慧」です。そして、誰もが真理に目覚め、仏になることができると説くのが仏教の特徴であり、魅力ではないかと思います。そこには西洋の一神教のように、神と人間との間に厳密な区別がありません。
これは仏教が、死んだ者のための宗教ではなく、今を生きる私たちが、迷いから離れて、苦しみから解放されるための教えであるということを表しています。
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