脳科学が示す心の本質と仏教
NHKに宗教をテーマとした「こころの時代」という番組があります。先日、「心とは何か、脳科学が解き明かすブッダの世界観」という放送の中で、物質的な存在である脳から心が生まれることの不思議について取り上げていました。
脳と心の関係を探求している脳外科医の浅野孝雄さんが、心(脳活動)の本質は、それぞれの脳細胞がバラバラに電気信号を出して発火する現象(混沌の状態)から、一つの秩序が生まれる現象(自己組織化現象)であると述べられていました。
すなわち、心とは、一時的に表れる脳細胞の秩序のある動きであり、変化し続けるものが本質であるということです。この変化するプロセスこそが存在であり、私たちが存在だとおもっているものは実体ではない、これを「実体の存在論」に対して、「プロセスの存在論」と言うそうです。
そして、お釈迦様が、無明から生死にいたる人間の心の動きを明らかにして「十二支縁起」を説かれ、すべてのものは縁によって生まれ縁によって消え去っていく、「諸行無常」であり「諸法無我」であると説いたことは、まさに、この「プロセスの存在論」を示していると説明されていました。
二千五百年前に、世界のあるがままの姿をお悟りになったお釈迦様の教えと、現代科学の知見との間にこのように共通性が見いだされるのは、大変興味深いことです。物事の本質を見極めるという点で、科学と仏教には共通するところがあり、主に物質的側面と心の側面を扱うという違いはあるものの、その一致点を探りながら、補い合い高め合っていくことが可能なのではないかと思います。
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