かがやく宇宙の微塵となりて

東京国際仏教塾のホームページのトップに登場する僧侶の写真などをご提供いただいるカメラマン、篠原宏明氏の個展が10月29日~11月10日まで開催されました。その中の1枚、紫金山・アトラス彗星の写真に見入りました。江ノ島海岸からみた西の空にむけ、シャッターをおした作品とのこと。次回のアトラス彗星の最接近は8万年後だそうです。
この写真を見て、宮沢賢治の詩が浮かびました。

まづもろともに
かがやく宇宙の微塵と
なりて
無方の空にちらばらう
※行がえは『農民芸術概論綱要』碑(岩手県一関市)に倣う

賢治は、仏教的な宇宙観を持っていました。
過去に生きた命、未来に生まれるだろう命も銀河系の中でひとつの縁で結ばれ、つながっている…。それは、ささやかであっても、かけがえのないものであり、ひとつひとつが、ひとりひとりがつながり、世界の幸せを生みだすという発想です。

数日後の11月13日、谷川俊太郎の訃報が流れました。
息子の賢作さんが朝日新聞のインタビューに応え、宮沢賢治の詩を引用し「父は『かがやく宇宙の微塵』になったのではないか」とありました。妙に納得したものです。

谷川俊太郎氏の作品に「川」という詩があります。その一文に

母さん
川はどうして休まないの
それはね海の母さんが
川の帰りを待っているのよ

私たちの人生は川の流れのようなもの。目的の海へと向かっているのですが、あれやこれやにぶつかり、ひっかかり、面倒くさいことや仕方のないことに巻き込まれています。そんな中にあっても賢明に生きています。賢明な姿勢があってこそ、宇宙を、海を、心の中に抱くことができるのだと思いませんか。

2024年も、あと数日で終わります。
今年は元旦に「令和6年能登半島地震」が起こりました。
来年は、穏やかに始まりますよう、その願いとともに、年末のご挨拶といたします。

東京国際仏教塾 事務局

写真提供:篠原宏明