仏教経済学について

近年、物質的な豊かさを追い求める近代経済学への反省から、「仏教経済学」という新たな経済思想が注目を集めています。

近代経済学は、物質的な豊かさや経済成長を重視するあまり、環境問題、貧富の格差など、様々な問題を引き起こしているという指摘があります。仏教経済学は、このような近代経済学の抱える問題を、仏教の教えに基づいて解決しようとする試みです。物質的な豊かさだけでなく、精神的な豊かさ、社会全体の幸福、そして環境との調和を重視します。

この仏教経済学の考え方は、ビルマの経済顧問を務めていたイギリスの経済学者 E・F・シューマッハーによって提唱され、彼の著書『Small is Beautiful.』(1972年発刊)の中で、その概念が初めて示されました。

仏教経済学は、「足るを知る」という仏教の教えに基づき、「最小限の消費で最大限の幸福を得る」ことを目指します。これは、現代経済学が前提とする「消費の最大化」とは対照的な考え方です。

その中では、八正道の一つである「正命(正しい生活)」という概念が重視されます。具体的には、無駄な消費を避け必要最低限のもので満足すること、労働を自己実現の手段と捉え、苦役と見なさないこと、所有物を独占せず他者と分かち合うこと、そして自然を搾取せず、調和した生き方をすることなどが挙げられます。

また、仏教の「縁起」(全ての事象は相互に関連し合って存在するという教え)や「中道」(極端を避け中庸を尊ぶ考え方)に基づき、経済活動においても、利潤追求だけでなく、人々の幸福、自然環境、社会福祉など、様々な価値観とのバランスを図ることが求められます。

近代経済学が「個人の利益」「競争」「物質的な豊かさ」「欲望の最大化」「消費の拡大」「資源利用」「経済成長」などを重視するのに対し、仏教経済学は「利他性」「協調性」「精神的な豊かさ」「社会全体の幸福」「必要最低限の消費」「自然との調和」「持続可能性」などを重視します。

物質的な豊かさだけでなく、心の豊かさや社会全体の幸福、そして環境との調和を重視する仏教経済学は、格差、環境破壊、紛争といった現代社会の抱える課題を解決するための重要な視点を示唆してくれているのではないでしょうか。

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