NEW!大乗仏教と菩薩の智慧

  • はじめに

私の担当は大乗仏教論ですが、その全体像について把握するというのは難しいと思います。ほんの一段面ではありますけれども、大乗仏教とは何か、大体のアウトラインが分かるようなお話にしていきたいと考えています。今回は大乗仏教と菩薩の智慧を中心にお話しします。

大乗仏教については現在、学会でも、「大乗仏教とは何か」の確定的な定義は定まっておりません。ようやく最近二十年ぐらいに資料や豊富な写本が回収され、今までの仏教概説書にあった大乗仏教のアウトラインが書き換えられるような時代になっています。大乗仏教というと小乗仏教に対するものだと普通は思いますが、小乗仏教という言い方は現在の世界の潮流では言われません。小乗仏教は、大乗仏教以前のブッダ以降の部派仏教時代のことを指すという意味で、伝統仏教という言い方をしています。また、大乗仏教が起きたからといってその伝統的な仏教がなくなったわけではありません。紀元前少し前に、多くの大乗経典が作られました。大乗仏教というのは大乗経典を作る運動でもあり、インドにおいてはその運動がなくなるまで、十三世紀の初頭まで大乗仏教は続きます。同時に、伝統仏教いわゆる小乗仏教もその時代まで続いているのです。ですから、大乗仏教が起こったからといって、このいわゆる伝統仏教がなくなったのではありません。このことが講義の前提です。

  • 伝統仏教と大乗仏教についての7つのトピック

1.バラエティ(多様性)とアイデンティティ(同一性)

 ここでは七つのトピックスとして、伝統仏教に対する大乗仏教の特性ということでまとめていきます。大乗仏教というのは、日本の仏教を見てもお分かりのように非常に多様性があります。多様性はあるけれども、その中で、どういうような共通性があるのか、これを話さないと理解するのは難しいと思います。その共通性を同一性と表現する方がよいと思いますが、このことは最後の方で言及したいと考えています。

2.大乗仏教(東・内陸アジア)VS上座部仏教(南・東南アジア)

 二番目は、大乗仏教は東アジアや内陸アジアに広がったということです。上座部仏教、これがいわゆる伝統仏教の流れということになりますが、上座(じょうざ)部というのは「テーラヴァーダ」の翻訳です。「テーラ」とは長老という意味で、長老を中心とした伝統仏教を上座部というふうに翻訳しているのです。その上座部仏教が、南アジアや東南アジア仏教に現在でも展開しているということです。ですから、大乗と上座部の広がった地域がこのように異なるということで、大乗仏教のアウトラインの一つが分かると思います。

3.仏教とインド宗教(バラモン教、ヒンドゥー教、ジャイナ教etc)

三番目は仏教とインドの宗教についてです。仏教もインド生まれの宗教ですが、インド生まれの宗教というのはバラモン教、ヒンドゥー教、ジャイナ教など現在も盛んな宗教があります。そのような宗教と大乗仏教はかなり影響し合いながら展開したといえます。ジャイナ教は初期仏教と非常によく似た教理と実践を持っています。仏教以上にもっと厳しい不殺生の戒を持った宗教であり、その規定のひとつには、船に乗って海を渡って他国に行ってはいけないという規定がありました。このため、ジャイナ教はインド国外には広まりませんでした。

※こちらは第36期スクーリングで行われた渡辺章悟先生の講義の冒頭の一部です。
※詳しい内容、続きを読みたい方は、冊子「佛教文化」第216号をご覧ください。
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渡部先生の講義風景

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