念仏の詩⑤

春は花 夏ほととぎす 秋は月 冬雪さえて すずしかりけり

道元禅師歌

曹洞宗を開かれた道元禅師(1200〜1253年)は仏教を学びに24歳の時に宋(中国)へ渡り、4年後帰国しました。

さっそく京都・宇治に禅の修行道場の興聖寺を建て、開堂にあたっての説法において「私は天童山の如浄禅師に見えて、『眼横鼻直』なることを認得して以来、人の意見に惑わされることがなくなった。経典や仏像など何ひとつ持ち帰ることもなく、ただ空手で帰国したので、皆が期待する仏法など何ひとつない」。

ここにいう「眼横鼻直」(がんのうびちょく)は、のちに『永平広録』という書物に収録された有名な言葉です。
眼は横に、鼻は真直ぐについている、これは誰もが知っている、当たり前すぎるほどに当たり前のことです。

しかし、この当たり前のことを当たり前に見ていくことは、実は難しいことかもしれません。

自分自身をよくよく省みると、だいたいにおいて、私というのは損か得かという欲得の物差しと、自己中心的な色メガネをかけて物事を受け止めていることに気付かされます。

眼が横に鼻が真直ぐについている、そのありのままを見よ、見よ。
そうすれば、そこにこだわりのない広々とした世界が顕になってくる。道元禅師はその世界を「花は春 夏ほととぎす…」と歌に詠まれました。

大熊信嗣学監

道元禅師 初開道場 興聖寺

#東京国際仏教塾 #仏教を学ぶ #仏教を知る #宇治 #興聖寺 #大人の学び直し