禅和尚のぶつぶつ⑨ 中道(ちゅうどう)

お釈迦様は出家して6年間の苦行でも心の安心を得られず、修行に「安きに過ぎず、固きに過ぎない」やり方があるべきと、瞑想によって「大安心」を得た故事から、「中道」という言葉が生まれました。身体的な活動だけでなく、好悪や愛憎等の心の動きでも、両極端を離れバランスの良い中間の道を選ぶことで、心のバランス、平安が得られるといいます。

ところで皆さんは飛行機にもバランスが大事だということをご存じでしょうか。

むろん、動くものは、船でも貨車やトラックでも、荷物の積み方によっては、カーブを回れなかったり、風や波でひっくり返ったりします。ただ、基本的に左右のバランスの方が大事で、気を配り、ゆっくりと動くことで、ある程度はカバーできます。
対して飛行機の場合は、左右よりも前後のバランス、重心位置が大事になります。離陸と降機の時にスピードに併せ、機体を持ち上げたり機首を下げたり、飛行機の角度を保つことが求められるからです。前が重ければ機首が上がりません。後ろが重すぎると。今度は機体が立ちすぎ、場合によってはお尻を擦ってしまうことにもなりかねません。

この機体のバランスを計算している部署があります。その部署は、基本的には貨物の積み方を工夫することで重心を整えます。それでも、一番後ろから座席指定を行う修学旅行のような団体の予約が入っている場合、どうしても後部が重くなり、調整が必要な便がたまに出てきます。

お客様のチェックイン作業と貨物搭載は同時進行です。チェックインが終わり、搭乗の時間直前に「調整が必要だ」という指示が届き、窓側や通路側の席の何人ものお客様にお願いを繰り返します。30分という限られた搭乗時間の中で全ての作業を終わらせることは、なかなか骨の折れる仕事でした。
対応を経て、飛行機が無事に出発。離陸を見届けた時には、安全を守れたことと、お客様の予定を遅らせずに済んだという安堵感を味わったものでした。

今も飛行機が空に浮かんでいる姿を見ると、バランスが取れた良い姿勢を保っているなと感じます。同時に、自分の心にバランスは「取れているか」と問うることが、たびたびあります。

太田宗誠 合掌

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