NEW!禅和尚のぶつぶつ⑯ 坐禅で触れる般若心経の智慧

般若心経は「空」という観念を理解して彼岸に到達するための知恵を解く276文字のお経です。有名な「色即是空 空即是色」という言葉と共に「無・・無・・」と否定の言葉が繰り返されます。それは、我々が実体だと思っている世界のみならず、自分自身の感覚や意識までもが実体はないのだと気付けと伝えているのです。でも実際には、触れてみれば身体はあるし、鼻から匂いは入ってくるし目からは自分とは違う周りの景色が見えてきます。それなのになんで実体がなんて言えるのでしょう。
本当に周りのものをそして自分自身を正しく見て、認識しているのでしょうか。もし正しく見ているなら、他の人達も同じように見えているはずです。

残念ながら私たちの日常は、実際はそうでないことを経験していると思います。同じ対象を見ても、違った興味で見ていたり、違う用途を考えたり、場合によっては形状までも違って受け止めたりしていませんか?これが芸術作品なんかだとその違いがより大きくなっていきます。どうしてこんなことが起きるのでしょう。
私たちは生まれてこのかた、色々な知識や情報を溜め込んでいて、新しいものに出会うと、その情報の評価付けを行っています。自分に有用か否か等の判断をしていきます。簡単に言えば先入観や自分の思い込みが自分なりのフィルターを造り、それを通して周りを見ているというわけです。

さらに現在は自分らしさが求められるため、自分の見方が一番だと思い込み易くなっています。そしてその思い込みが他を否定することから、同じものを見ているにも拘らず争いが起り、その争いがより大きな不安や不満を呼び煩悩の嵐になっていくわけです。

そこで「般若心経」では、正しい智慧によって個々のフィルターを外して先入観を無くし、心を空にすることで、真実の姿=あるがままを理解・受け入れることが、不安・不満そして争いもない「大安心」の世界が実現されると説きます。
その理解を自分の生き方のベースにするため、坐禅は周りの刺激から自分を切り離し、自分本来の中に眠っている知恵を呼び起こします。その知恵は自分の心を、良いも悪いも受け入れながらも、一方に偏った見方を排除した「中道の心」に変えてくれます。

その心が外からの情報にも左右されず、世の中で起こる事象の原因と結果を正しく理解することで、心に余計なさざ波も立たない「大安心」の中で、様々な課題を解決して生きていくことを可能にしてくれます。

                  太田宗誠 合掌

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