オリンピックシンボルで思うこと…③

四つの要素が結合した五輪塔

さて、五輪の輪の意味は分かりましたが五輪塔はどんな意味があるのでしょう。高野山奥之院にある武田信玄や上杉謙信、織田信長、明智光秀ら宿敵同士の供養塔がよくテレビで映されますが、あれが五輪塔です。オリンピックの五輪が五大陸の結合を表わしていましたが、五輪塔も異なった要素の結合と調和という仏教の「五大」思想を表わしています。
お墓で戒名などを書いた卒塔婆を見ますが、卒塔婆は板で作った五輪塔です。卒塔婆は古代インド語のストゥーパの当て字で、もとはお釈迦様のご遺骨を安置した舎利塔・仏塔です。仏教を広めるためアショカ王という王様が全国各地に建てた仏舎利塔・アショカピラーが原型で、円筒形の柱の上に半球形のドームを載せた塔だったのが、時代を経てパゴダのようなドームや五重塔のような楼閣、多宝塔などに変化していき、日本では平安時代に独自に五輪塔が生まれました。
五輪塔の形は、下から①四角い立方体(箱型)②丸い球体③四角垂(三角錐、屋根型)④半球体5宝珠体(団子・饅頭型)の石を積み重ねた形で、下から地輪、水輪、火輪、風輪、空輪と呼ばれ。地・水・火・風・空を表します。
この世界は何で出来ているか? インド古来の考えに「四大」「五大」「六大」思想があります。世界を構成している究極の実体は地・水・火・風の四元素で、宇宙も物質も人も皆この四元素の結合で出来ている。物が壊れ人が死ねば、この四元素に還元され、水蒸気や雨、土になって再生を繰り返し、永遠不滅に残るということです。空は四元素の容れ物でこれを加えると「五大」。これに意識を加えると「六大」です。
この五大を密教では「五輪」と呼び、それを形にしたのが五輪塔です。さまざまな要素の結合と調和によってこの世界は成り立っているという地・水・火・風・空の五大思想の五輪塔と、自然・文化の異なる五つの大陸の結合・連帯を表すオリンピックシンボルの五輪は、多様なものの結合と調和がこの世界の基礎である、という考えで一致しています。  -つづく 次回は3月28日-

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