禅和尚のぶつぶつ⑪ 無心
暑い夏が終わると、爽やかな秋が始まる前に台風シーズンです。
日本では西のほうが台風の進路にあたることが多く、被害が大きくなる傾向にあります。昨年は、元旦の大震災で被害を受けられた輪島市や珠洲市の方々が再び、豪雨に襲われました。熱帯低気圧に変わった台風の影響です。自然相手とはいえ、心が痛みます。
今回は、福岡空港で台風に遇った時の話です。
私が福岡空港に配属された年は万博が開催され、そのおかげで大阪は勿論東京行も全便満席が続いている状態でした。そんな時に大型の台風が襲来しました。元寇の乱では台風は日本を救った神風としてもてはやされましたが、安定した気流に従って空飛ぶ飛行機にとって台風は天敵です。なすすべなく一日欠航になってしまいました。
市内の予約係に問い合わせの電話は殺到したおかげで、雨風をついてでも空港へ来られる方は殆どありません。まだ何も判っていない私は、普段忙しくしている分ゆっくりできるとノンビリと休憩を取ったりしていました。
ところが、休憩から戻ってきたら事務所では、上司や先輩たちが厳しい顔で話し合っていました。何かトラブルでも起こったのかと話に耳を傾けると、天気が回復する翌日の取り扱いについてでした。明日はまた満席続きで普段以上に忙しくなるのだろう。そうなんです。翌日は翌日の便で、すべて満席。ということは、今日欠航した一日分のお客様をどうするかということ。救済の臨時便は、発着枠と機材繰りで、そう簡単に増えません。しかも、普段から空席待ちのお客様も相当数います。欠航便の方の優先的取り扱いをどうするのか。私は既に翌日のカウンターでお客様に取り囲まれ、吊し上げられている姿を想像してしまいました。
対策会議が終わり結論は、まさに「コロンブスの卵」=盲点でした。
それは翌日の便名を全て欠航にして、その機材を臨時便扱いにすること。当日のお客様と台風で欠航のお客様とをカウンターに着た方を順に受付するというものでした。
実は台風で欠航になったお客様は、相当数の方が、旅行取りやめ、日程変更、または他の交通手段への変更をされており、一日に均していくと2本位の臨時便追加で十分です。予想通り、その日の内に空港は平常に戻っていました。
先輩たちの積み重ねてきた経験とトラブル解決に安堵している余裕は、「無心」が生んだものかもしれません。どんな異常事態にも窮することなくアイデアを無尽蔵に呼び起してくれるものだと、今になって思います。
太田宗誠 合掌

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