禅和尚のぶつぶつ⑥ 衆生本来仏なり
「衆生本来仏なり」
江戸時代中期、臨済宗再興の祖といわれた白隠禅師が作成したといわれる和文の『坐禅和讃』の冒頭の宣言です。どんな人でも奥底に「気高く、優しい」心を蔵している。坐禅を通じて、それを確認・自認しなさいという内容です。
航空会社生活も後年に入り、素晴らしい部下に支えられながら、カウンターの責任者をしていた時の話です。
当時の新入社員は3カ月の試用期間で現業での適否を判断され、最悪は契約解除=解雇になります。いくら才媛であっても、当時の旅客部の組織上、その3カ月にて、到着、搭乗部門、カウンターの各部門を回り、各部門長に適否を判断されることになっていました。
その年は、名門大学を含む女性が多く入社し、成田空港に配属されてきました。
当時の学生時代はバブル真っ盛り。派手目系の新人類がまとめて入ってきたと思ったものでした。その中でも、新入社員離れした大人の雰囲気を持つ一人の女性が問題。仕事は覚えない、接客態度もいい加減、すぐ休憩を取ると、最初に配属された搭乗部門で散々な評価です。搭乗の部門長は女子社員からの人望も暑く、彼女の教育を期待されていましたが、あえなくギブアップ。
いよいよ最後のカウンターへの配属です。ここで駄目なら、解雇も考えないといけない状況です。
そんなある日の夕刻、交代で食事に入る時でした。カウンターの責任者ブースにいたベテランの女性が私を手招きするのです。そして、彼女が指さす方を見ると、カウンターに残っていた件の彼女が、近づいてきた小さなお子さんに声を掛けているところでした。その時の表情と言ったら…、まるで慈母観音のような優しい顔で、自分の腰を折り、同じ目線で話しているのです。
そのベテランの女性は「あの子は絶対にものになる。私に任せてください」というのです。当時は、企業や社会で女性が受け入れられ始めたばかりの時代。彼女は結婚、子育て、仕事に真摯に向きあい、日頃から部下の若い子に頼られるリーダーシップを発揮していました。
それから1カ月。試用期間が終了のころに、問題の女性の雰囲気ががらりと変わりました。休むこともなく、解雇理由もないまま、むしろ、相当な勉強を要する発券部署で頭角を現し、3か月後には他のスタッフが航空券の相談をするほど、リーダー的存在へと成長していたのです。
つまずきは、最初の配属先。いい加減な先輩の指導をきっかけに、会社への興味ややる気を無くし、自分の本当の気持ちを覆い隠してしまったようです。
小さなお子さんが、彼女本来の姿を呼び起こしてくれました。
指導に当たった女性からは、どんな人にも「仏さまがいる」と信じ、その発掘に力を貸していくことが上司の役目と教えられたように思い、今でも感謝しています。
太田宗誠 合掌

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