仏教を学ぶテキスト

仏教を学ぶ際に必読といわれる本をご紹介いたします。中村 元先生が1985年4月から9月までNHKラジオ第2で放送された連続講義「こころをよむ/仏典」を活字化し、前田專學先生監修による『ブッダの生涯』(岩波書店)です。海外でも翻訳され、仏教のみならず、東洋哲学を学ぶ人が手にする一冊です。東京国際仏教塾のスクーリング時にもテキストのひとつとして使われています。

この本はとても読みやすく、わかりやすい文調です。しかも、タイトル通りに「ブッダの誕生」「ブッダのことば」「悪魔の誘惑」「生きる心がまえ」「ブッダ最後の旅」と順を追って書かれていますから、仏教初心者にはありがたい。ラインマーカーの線が一番多くなる本かもしれません。

その中に心に残る経の解説がありました。いまも南方仏教で「慈しみの経」と呼ばれ、唱えられる『スッタニパータ』の解説です。

「一切の生きとしいけるものは、幸せであれ」…われわれがつきあっている、目に見える人々の幸せを願う。のみならず、生きとし生きるものの幸せ、さらにわれわれが見えないところに存在する魂まで含めて、すべてのものの幸せを願う…という理想。仏教が生まれる以前のヴェーダの宗教でもかすかに表れ出ていた思想が、仏教で大きく取り上げられた、と説明されていました。

それぞれの読者が仏教をぐっと身近に感じられる一文が、この本で見つかるかもしれません。