老いてなお著述

1998(平成10)年、東京国際仏教塾の開講式で行われた鎌田茂雄先生の記念講演を18回に分け、毎日ご紹介しております。本日は第3回です。

今日は、佐藤一斎という方の、 言葉を主にして、 お話したいと思います。
佐藤一斎先生は 『言げん志し四し録ろく』 という本を書かれました。 四つありまして、 ふつうは 『言げん志し録ろく』 と言います。 中年のとき書いたもの、60代・70代・80代で書いた四つの語録です。
一番最後に書いたものが、 『言げん志し耋てつ録ろく』 で、 老いに至る極限の老いて80歳で書いています。
日本の歴史を辿っても、80歳で著述をした人は沢山いますが、 仏教人のなかでは、 鎌倉時代に凝然人が、83歳まで著述をしています。
日本仏教史で一番偉い人をあげよと言われれば、 私は、 迷わずこの人だと思っています。
仏教史の上で、 一番著述の多いのもこの人で、 東大寺の学僧です。83歳で倒れるまで、 著述を続けた学者で、 『三国仏法伝通縁起』 や 『八宗綱要』 の仏教概説を書きました。
凝然は82歳にして、 密教・真言宗から禅宗に至るまで、 八宗の綱要書を書いたのです。
両者とも当時の80歳ですから、 今で言えば百歳くらいでしょうか。 それでも著述をしていたのです。
凝然大徳(ぎょうねんたいとく)などは、 一生東大寺にいたのですから、 相当の粗食だって事でしょう。 しかし、 著述の功績は残されたのです。
『言志耋録』 の中で佐藤一斎先生は、 このように述べています。
人生というものは、20歳から30歳までは、 日の出の太陽のようなものである。40歳から60歳は、 日中の太陽だ。 そして70歳、80歳は落ちる日のようなものであると。   -つづく-