子供に学ぶ

1998(平成10)年、東京国際仏教塾の開講式で行われた鎌田茂雄先生の記念講演を18回に分け、毎日ご紹介しております。本日は第2回です。

子供に学ぶ
最近NHKの出版局で本をどんどん送ってくれます。 しかも自然科学から教育というように、 ありとあらゆるものを、です。
折角送っていただいたものですから、 全部ゴミ箱に捨てるのは悪い気がして、 少し読むようにしています。
今は本というものは洪水と同じで総てに目を通していたら、 情報で頭が爆発してしまうのです。 ですから、 右から左へ捨てた方が良いのです。
送られてきた本は、 玄関に積んであります。 一寸外出する時に読むようにしています。
確か 『子供に学べ』 という本だったと思うのですが、 一番最初に子供と老人は何処が違うかということが書いてありました。
子供と老人或いは中年でもよいのですがその違いは、 死の自覚が在るか無いかということなのです。
大人というものは、 10年後か20年後か分からないが、 何とはなく俺は死んで行くのだ、 死が待っているのだということを無意識のうちに知っている。
ところが3歳・4歳の子供の眼を見てください。 死なんて無いのです。 例えあったとしても、 お祖父さんお祖母さんが病院で亡くなって、 葬式の写真に掌を合わせなさい、 と言われても実感は無いのです。
昔のように、 自宅でお祖父さんやお祖母さんが亡くなれば実感が出てくるのでしょうが。
3歳・4歳・5歳の子供の眼を見ていると、 無限に未来があると著者は書いています。 眼が輝いていると言うのです。 可能性でしょうか。
ところが50を過ぎて御覧なさい。 自覚するかしないかにかかわらず、 どんな人でも自分の死ぬことが、 ちゃんと分かっているのです。
人間は死ぬのだ。 自分も死ぬのだから人生の末期に、 何かせねばならないかな、 と無意識のうちに思うものなのです。
しかし、 幼児にはそれがないのです。 というのは時間の制限が無いということです。 あるのは無限の輝きだけということです。 皆キラキラ輝いています。
ところが50を越すと、 何と無く眼や身体がショボショボしてきて、 先も見えてきてしまうのです。  -つづく-