転換の時代に仏教と接する

鎌田茂雄先生の「こころの時代」の2020年6月7日から全7回の連載は、大変な人気を博しました
はっと気づかされるお話に、今さらながら感謝いたします。
そこで、まだまだ伝えたい鎌田先生のお話を連投でご紹介したいと考えました。
こちらは、1998(平成10)年、東京国際仏教塾の開講式で行われた記念講演でのお話を全18回に分け、毎日、少しずつご紹介いたします。
本日は、その第1回です。

人生に定年無し
私は定年になりましてから、 丁度10年になります。
定年というのは、 人間が決めたもので、 本人はやりたいと思っても、 その組織の定めでありますので、 それに従っている訳でして、 人生そのものには定年はありません。
人生に定年無しと言いますが、 まさにその通りです。
会社には定年があります。 学校にも何処にもあります。 しかし、 人生に定年は無いのです。
そういう意味で、 第二の人生を目指されて、 こういう塾で勉強なさるということは、 本当に有意義なことだと思います。

転換の時代に仏教と接する

仏教塾が始まった頃は、 丁度バブルの時代だったと思います。
家を買ったり、 お金を作ることに競合していた時代でしたが、 たった10年経つと全く変わってしまうものなのです。
十年前、 証券会社や銀行が潰れるなどとは、 誰も思ってもいなかったことです。 しかし、 現実はそうなっている訳ですから、 世の中の変化というものは、 もの凄く早いものなのだ、 という感じがいたします。
歴史でも50年が一つの転機です。 敗戦から丁度50年たっておりますから、 日本も一つの転機なのです。
明治維新から敗戦が一つの転機でありました。 そして軍国日本が亡んでいったわけですが、 今度は経済に遮二無二突き進んでいくわけです。
しかし、 もうどうにもならない所へ到着して、 これからは考え方を変えていかなければいけない。 生き方を考えなければならない。
というような、 大転換の時代に皆さんが、 仏教と接するようになることは、 大きな意義のあることだと思います。
今日は、 気持ちや、 やる気には年取った人も、 若い人もあまり区別が無いということで、 『志気しいきに老少なし』 という題を付けてみたのです。
見回しますと、 お年寄の方が大勢おられますが、 中年・壮年の方や、 お若い方もおられます。
仏教を学ぶのに、 年を取ったから仏教が分かる、 という訳ではありませんし、 若い人は若いなりに仏教がわかるのです。
私が仏教に触れたのは、 昭和20年の終わりの頃です。
兵隊の学校から帰って来ましたが、 今まで学んだ4年間のことを、 全く価値がないように言われたものですから、 腹を立てて仏教の学びに入ったのです。 ですから皆さんと違って、 「この野郎」 と思って、 始めた訳なのです。
戦争についてラジオでは、 真相はこうだ、 ということを放送していましたから、 私たちはそれを初めて聞いてびっくりしてしまった訳です。
考えてみれば、 アメリカの謀略で放送したものでしょうし、 アメリカの占領政策をうまく遂行するために行った手段だと思います。
しかし、 当事者にとっては大変な衝撃を受けた記憶を、 未だに覚えています。
そういうことはけっして忘れることの出来ないものでして、 酒でも沢山飲んで酔っ払うと、 急に思い出してくるものなのです。
人間というものは、 猛烈に変わった人生や、 極端に大転換をとげたようなことを経験しますと、 普段は隠して、 抑えていますから何も出てこないのですが、 何かの拍子に出てくることがあるものだと感じます。  -つづく-

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