伝統ってなんだろう

金属造形作家、鈴木祥太氏の作品「小さい秋」

お盆の帰省はおろか、夏休みで外に遊びに行くこともままならず、休日は無駄に時間を費やしていることが多いと感じるこのごろです。そこで今日は本箱をごそごそと。以前購入し、速読した本を1冊、引っ張り出しました。
半世紀にわたり世界を旅して、土地の言葉も習慣さえも吸収してしまい20代で日本初のスワヒリ語の文法と辞典を発表した希有な言語学・文化人類学の西江雅之氏。彼の、食にまつわる様々な視点を紹介した著書『食べる』(青土社)です。現代食、伝統食から、現地の人ですらもはや「食べない」物を口にする西江氏は、生涯訪れた数十か国以上の人たちからも、通称・ヘンジン(笑)。このなかに「伝統」が取り上げられています。一文を抜き取ると、
「私の考えでは、伝統とは、何か行動を起こす時に、無意識に頼ってしまう拠り所なのです。すなわち、それは過ぎ去った過去の事実ではなく、人びとの中に息づき、その未来に向けた行動を支えるものであるとも言えるのです。」
そして以前、「伝統」の考え方を「未来を懐かしむ」というタイトルで記述した時に、多くの人から違和感をもたれたと。それを「伝統は過去から現在までという考え方が、人々の頭に滲み込んでいるからだ」と分析しています。最後に「ごく当然のこととして何かを食べる。その未来にかけて起こされる行動の中にこそ、伝統は生きていると言えそうです」と、この章を締めています。
伝統は、その土地で代々伝えられていることだけを指しているとように思いがちですが、現在の、そしてその先の人が目を向けなければ成立しません。現代の日本でも、日本の伝統技術という礎があり、それを一歩ずつ進化させるアーティストが活躍し、驚くような作品を発表しています。
仏教も同じではないでしょうか。この先、心の拠り所であり続けるためには、何ができるのか。ひとりでも多くの人が目を向ける行動を続けない限り、仏教は継続していかないのです。

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作品の写真は、金属造形作家の鈴木祥太さんに頂戴しました。ありがとうございます。

金属造形作家、鈴木祥太氏の作品「綿毛蒲公英」