死への距離感

大河ドラマ『麒麟がくる』で、奈良の興福寺の塔頭一乗院門跡では覚慶と名乗っていた室町時代最後の将軍、足利義昭が「死にとうない…。死ぬのが怖い」という台詞がありました。この言葉が耳に残ってしまったのです。
タイミングは、COVID-19で一時放送を中断を余儀なくされたあとのこと。
ドラマで取り上げられた室町時代終焉前後の人の心のザワツキが、今の生活と重なっているように感じています。もちろん、明日、戦に巻き込まれてしまうわけではありません。ただ、核家族化した現代、「死」というものとの距離感が遠く、日頃の生活の中では、その欠片すらなかったように思います。それが「この病気で死ぬかもしれない」「仕事がなくなってしまうかもしれない」「生きていけないかもしれない」という、現実的で身近で、切迫した恐怖に襲われ、「死」への距離がいきなり身近に感じてしまいました。
人は生まれた瞬間から、死ぬことは決まっています。どれだけ科学の知識を増やしても、いくら科学が進歩しても、死は、いつの時代でも、だれにでも平等におとずれます。そんなことを意識していない時にテレビの画面から「死ぬのが怖い」と言われ、頭の芯の部分がフリーズしてしまったのだと思います。
どう生きていくか。今日も、ちゃんと生きているか。
考えなければならないことは、実は、こちらの方でしょう。
今は、生まれてから死ぬまでの人生の宿題に気づかされた、そんな機会を与えられたと捉えています。

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