新しい関係を築くこと

季節の変わり目には訃報が届くことがあります。そんな知らせが届くたび、涙します。
バッグに入れ持ち歩くほど手放せない本があります。前回のコラムでも紹介した中村 元先生の著書『ブッダの言葉』(新潮社)です。
そこに「死と向き合う」という章があります。
ブッダが愛弟子ふたりに先立たれた時の話しです。集会で人目を気にすることなく溜息をもらし、かつ「もうふたりの姿を見ることが出来ない、虚しいものになった」とおっしゃる。しかし、それに続けて「悲しむなかれ」とも説いたと書かれています。中村先生は、
「悲しむことが間違いなのではない。ただ悲嘆にくれるあまり悲しさに心を奪われてはならない」「とにかくわれわれは悲しみにしがみつきやすい。悲しみから離れようとして、気づかぬ間に新しい悲しみを上書きしていることがある」と記述。ブッダは「肉体はわれわれなのではない。」と教えてくれたとも。
「だれかの死を受け入れることは、自分のなかのそのひとすべてを失うことではない」「悲しみにしがみつく心を手放したとき、先立った人との間に肉体にとらわれない新しい関係が生まれるのだ。」
留めなく流れる涙は故人への思い。もっと話しをする機会があればよかった、悪態をつかなければよかった、などという反省やエピソードもまた、故人への思い。様々な思いが交差しますが、これから仏教の門を叩こうとする者ならば、故人と出合えたことへの感謝、喜び、関係から生まれた新たな姿勢、こちらを大事にしていただきたいと願います。

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