横尾忠則氏が描く作品の海へ

東京現代美術館で開かれている「GENNKYO 横尾忠則 原郷から幻覚へ、そして現状は?」展へ、先日、行ってきました。
コロナ禍で書き上げた近作30点を含む603点が並ぶ様子は壮観、YOKOO worldが全開の個展でした。圧巻の作品たちが次から次へと押し寄せてきます。ひとりのアーティストが生み出した作品という大海へ投げこまれたような感覚を久しぶりに体感しました。
作品タイトル「安らかに眠れ」。幾重にも塗り重ねられた真っ赤な油彩のキャンバスに、ルソーやピカソなどの顔、女性が描かれていています。「タイトルは誰に向けたメッセージなのだろう」と頭の中がグルグル、その場を動けません。また、愛猫を描いた「タマ、帰っておいで」の作品群のほとんどが作家蔵になっていることに、愛の深さを感じたりもしました。
アーティストは修行僧に似ていると表現した人がいます。身を削るような姿が重なるからなのでしょう。果たして、横尾忠則という人物は、どんな姿勢で製作に臨んでいるのか、知るよしもありません。しかし、自身のTwitter上で「僕は子供の頃から画家だったんだと、この展覧会でそう思った。そして絵には進歩がないことがわかった。あるのは変化だけだ。だって5歳の時の絵は85歳の時より上手いんだから。」とつぶやいていらっしゃる。修行僧というよりも、体の内側から湧き出るエネルギーを飄々と描き出す、突き抜けた人物であることだけはわかります。

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