沖縄の「エイサーと仏教」⑧

東京国際仏教塾卒塾生の並木浩一さんによる書き下ろしエッセイ“沖縄の「エイサーと念仏」”の第2部をお届けします。
全5回、毎週木曜日に公開いたします。

チョンダラーという「聖」

伝統的なエイサーが演じられる際に欠かせないのが「チョンダラー」という役割です。チョンダラーは顔を白塗りにし、滑稽な表情に化粧し、縞の着物のはだけた裾からふんどしをのぞかせる姿で、滑稽な所作を演じます。ピエロのような道化役として沿道の子供を笑わせたりしますが、道じゅねーの行進の整理をしたりもする仕切り役でもあります。伝統的なエイサーのシリアスな演舞と、チョンダラーの存在は好対照を見せるのですが、ここにもエイサーと沖縄の仏教の関係が垣間見えます。実は戯画化されたチョンダラーは、もともと「念仏聖」であるというのが定説なのです。この説は、高名な民俗学者の折口信夫らも支持しています。
チョンダラーはもともと「京太郎」と書き、現在の京都から渡来した芸能者の集団といわれています。彼らの別名は「念仏者(ニンブチャー)」であり、念仏踊りや念仏歌を歌う、門付けの芸人といった存在です。本来、チョンダラーはエイサーと直接の関係はありません。ですが、同じく念仏をルーツとする2つの芸能は沖縄を舞台に合流していき、近代においてはもはや不可分のものになりました。歌や踊りで念仏を広めた念仏聖たちの活動と、念仏踊りから始まるエイサーは、もはや沖縄を代表するひとつの表象となっています。  -つづく-

Profile:並木浩一(なみきこういち)
1961年横浜生まれ。桐蔭横浜大学教授。時計ジャーナリスト。ダイヤモンド社「ダイヤモンド・エグゼクティブ」「TVステーション」両誌編集長、編集委員を経て大同大学教授(メディア論・芸術論)、2012年より現職。編集者時代に東京国際仏教塾9期入塾、「仏教を学ぶと、生きるのが怖くなくなる」と実感し、専門課程を経て浄土真宗で得度。「沖縄のエイサーと念仏」についても研究中。

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