曹洞宗専門課程を終えて

第34期 T.T.

『宇治、そして興聖寺が結んだ縁を想う』 

人のみならず場所もまた一つの道場である。今回の仏徳山興聖寺にて実施された5回にわたる後期研修を終えて、私の心に強く沸き上がった率直な想いである。

昨年秋の研修の初日(2022年10月29日)、期待と不安を胸に訪れた宇治の地には、不安を払拭するかのような温かく包み込んでくる不思議な趣きがあった。道すがら氏神である宇治神社(その由来が実に興味深い)を訪れ礼拝した。社の一角で、偶然、この地にゆかりの、しかも馴染んでいた歌占いで知られる「源氏物語おみくじ」に 出会い、早速占った。以後、研修の度に、引き当てられた和歌で自らの想いを占うことが私の恒例となった。

第4回目、こんな歌を引き当てた。

 法の師を たづぬる道を しる べにて

 思わぬ山に 踏み惑うかな 薫

この歌になぜか惹かれるものを感じ、調べ、源氏物語『宇治十帖』の巻で語られた浮舟と薫の悲恋の顛末を知った。自らの業に苛まれ命を投げだそうとした薄倖の浮舟を救い、仏道に導いて出家させ、その後も薫との仲立ちを務めた横川僧都(源信がモデル?)に、心を打たれた。その温かい眼差しと苦しむ者を救わんとする姿勢と行動に深い慈悲をみた。

道元禅師がこのエピソードを知っていたかどうかはわからない。しかし、道元禅師の眼差しと修行には、横川僧都に通じる道心を思わずにはいられない。

『正法眼蔵』に込められた道元禅師の教えは、幣 道紀先生によって私たち研修生にわかりやすく解釈されて、伝えられた。それを一人ひとり、しっかりと受けとめようとした。もちろん、学解のみならず坐禅や読経等を通じて、心身で受けとめるべく一歩踏み出した。

最終日、宇治のしかも興聖寺という場と人の縁に導かれて、会食し、仏道の学友として縁を結び、共にそれぞれの道を踏み出す決意を固めた。

 善知識 宇治茶茶そばで 集い 和む 浮世

 忘れて 道を語らん

興聖寺の本堂

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