傘がない!

お気に入りの傘がないことに気付きました。気付いた日は、別の傘を持って出かけましたが、往復の道すがら「どこに忘れてきた?」と考え続け、持参した傘をまた、忘れそうになっていました。

放下著(ほうげじゃく)という禅語があります。放下とは、投げ捨てる、放り出すことを指し、過去から現在に至るモノだけでなく、経験したことから自我まですべてを捨て去り、執着から離脱するということだそうです。

そう簡単に出来るものでしょうか。
傘のような小さなモノにすら執着する身。「こう言われた」、「こういう態度を取られた」という記憶に至っては、なかなか忘れることができません。なにかをきっかけに思い出しては腹が立ちます。

そのイヤだったことを、ひとつだけ忘れようと決めました。ひとつだけにも関わらず、幾度となく苛つきます。そのたびに「忘れると決めたはず」と思い直す、その繰り返し。ただ、ある日、「あっ!忘れていた!」へ。
たったひとつの事柄ですが、執着していたことから離れられたように思います。

世の中には、苦しい“もの”や“こと”、“時間”がいっぱいあります。それにこだわり続ける限り、苦しいことや思い通りにならないことが、どんどん増えていく可能性があるのでは?
一旦、立ち止まり、心に留め置く必要があるか、問いかけてみてはいかがでしょう。

そう思いつつも、「傘を忘れていませんか?」と電車の遺失物係や立ち寄った店に問い合わせる始末です。山ほどある執着からは、簡単には抜け出せそうにありません。

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