本当の自己を知る

仏教は、仏(ブッダ:目覚めた者)のさとりに触れて、自らが仏となることを目指すものですが、これは同時に、本当の自己を知るということでもあります。

すべてのものは、「縁起の道理」の中にあり、お互いに関わり合い、支え合っています。自分も他人も、他の動物も、山河草木に至るまで、すべてにそれぞれの役割があり、何か一つが欠けても今の自分に繋がる縁が変わり、縁によって起っている今の自分と同じ自分は存在しなくなります。

本当の自己というのは、自分が思い込んでいるように他のものよりも特別に大切な存在ではなく、また同時にこの世界すべてのもののために欠かせない存在なのです。仏が一切平等の無分別智をもって衆生をご覧になるというのは、このように世界のあるがままの真実の姿を見て、すべてのものがそれぞれに大切であるということを、慈しみの心でご覧になることです。

仏の道を歩むということは、宇宙全体に抱かれて、すべてのものと関わり合っている本当の自己を知り、自分が思い込んでいた自己から離れるということでもあります。

これを道元禅師は、『正法眼蔵』の中で、「仏道をならうというは、自己をならうなり。自己をならうというは、自己をわするるなり。自己をわするるというは、万法に証せらるるなり。万法に証せらるるというは、自己の身心および他己の身心をして脱落せしむるなり。」と表現されています。

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