ただ仏のみこれ真なり

「世間虚仮 唯仏是真」(世間は虚仮にして、ただ仏のみこれ真なり)。

日本に仏教を取り入れられた聖徳太子が残された言葉です。

我々はともすれば、目の前の世界(世間)が現実であって、仏や菩薩の世界は想像上のものであると思ってしまいます。

しかし、真理をおさとりになったお釈迦様が「縁起の道理」として示されたように、我々が実体であると思っているものは、実はさまざまな縁が集まってそこに存在しているように見えているだけです。縁に依って存在しているものはすべて移ろいゆくものであり(諸行無常)、不滅の実体はどこにもありません(諸法無我)。

人々がこだわる地位も名誉も財産も権力も、友人や家族に囲まれた豊かで充実した人生も、国家や会社も、すべては移ろいゆくものです。我々は、それが「虚仮」(虚しい仮のもの)であることに気がつかず、本当にあると思ってそれに執着し、争い、奪い合い、人を傷つけ、自分をも傷つけています。

「世間虚仮 唯仏是真」という言葉は、移ろいゆくものを追い求め、真理に眼をつむることが迷いであり苦しみであるということ、真実の世界(仏の世界)を求めることが、虚仮の世間の中で安心を得るための唯一の道であるということを教えてくれます。

親鸞聖人は、このことを「煩悩具足の凡夫、火宅無常の世界は、よろづのことみなもって、そらごとたはごとまことあることなきに、ただ念仏のみぞまことにておはします。」(あらゆる煩悩を具えた私たちや燃えさかる家のように崩れ去る世間は、すべて虚しく、うそやいつわりばかりで、まことのものはなく、ただ念仏のみがまこと(真実)である)という言葉で示してくださっています。

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