心が作り出す苦しみ

お釈迦様は、我々の生きているこの娑婆世界は苦しみに満ちているとして「一切皆苦」とご覧になりました。そして、その苦しみから解放される真理へと歩む道、苦を転じて楽としていく道として、仏教を説かれました。苦しみとは何であるかを見つめ、そこからの解放を説かれたのです。

この世界は、そんなに苦しみばかりなのでしょうか。苦もあれば楽もあるというのが、私たちの感覚ではないでしょうか。

お釈迦様が説かれた「苦」とは、自分の思い通りにならないことを表します。煩悩が作り出す自分中心の思いと世界のありのままの姿とが一致しないことが、あらゆる苦しみの元となっていると説かれます。

では、自分の思いが満たされるようになったとき、私たちは苦を脱して楽を得られるのでしょうか。

お釈迦様は出家する前は、欲しいものが何でも手に入る王子様であり、4つの季節がそれぞれ快適に過ごせるような専用の宮殿を持つような生活をしていました。しかし、お釈迦様の心は満たされることなく、反対にこの世界を苦しみの世界であると感じられたのです。

煩悩の求めるままにまかせていくのでは、「諸行無常」「諸法無我」という世界の本当の姿と自分の思いが異なるままであり、思い通りにならない苦しみがずっと続くことになるからです。

煩悩とは、貪欲、瞋恚、愚痴に代表される自分の心を煩わせ悩ませる心の働きのことです。人間が持って生まれている煩悩が、この世界の真実の姿は自分中心には成り立っていないという、ありのままの世界の姿を見ていくことを妨げます。

そして、本当は自分の力だけではどうにもならないことを思い通りにできると勘違いして、そうならないことに苦しんでいるのが、我々人間の姿なのです。

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