イチジクのジャムをつくりながら
イチジクも終盤。熟したイチジクで、今季はこれで最後と思いながら、ジャムづくりをはじめました。1個ずつ皮をむきながら、鍋へ。煮詰まるまで混ぜながら、イチジクと宗教を結びつけるエピソードはないかと考えていました。
イチジクでぱっと思いつくのは、旧約聖書の「創世記」、アダムとイヴにまつわるイチジクの葉。それ以外はなにも浮かびません。
もとはアラビア半島で6000年以上前から栽培されてきた果実。ペルシャから中国経由で1600年代半ば、江戸時代に日本へ渡ってきたものです。シルクロードとも重なるわけですから、どこかに仏教と接点はないか考え、検索してみました。
見つけたのは、お釈迦様が菩提樹の下でさとりをひらいたとされる「菩提樹」が、インド原産のクワ科イチジク属のインドボダイジュであることでした。ジャムにしたイチジク同様、花嚢(かのう)がつく幹生花です。
日本で「菩提樹」とされる樹は、中国原産のアオイ科シナノキ属。葉腋(ようえき)から垂れ下がった細い花柄に黄白色の花が数個、咲きます。
一説では、臨済宗の栄西禅師が、この菩提樹を請来したことが、日本のボダイジュの始まりとも。それを証すように、栄西禅師が創建した福岡の聖福寺(しょうふくじ)の禅堂の前には、第123代住職、禅画で著名な仙厓義梵(せんがい ぎぼん)禅師が「菩提之樹、勿翦勿伐佛之所坐」の石碑を建て、現在まで大切にされていることがわかりました。
イチジク→ボダイジュ→仙厓と、仏教マメ知識を入手——出来立てのジャムを冷やす退屈な待ち間が充実した気分です。
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