日 本 仏 教 史ー大乗仏教より密教へー

第37期スクーリング、大正大学名誉教授 元学長・小峰彌彦 先生の講義の一部を紹介します。

はじめに

仏教は長い歴史を通して様々な変化をしながら展開してきたが、そのなかでも大きな変革をもたらしたのは大乗仏教の出現であり、さらにはその後に興起した密教を登場である。仏教の流れは南伝と北伝との二つがあるが、日本仏教は北伝仏教の系統線上にある。このうち日本に大きな影響を与えたのは北伝仏教であり、具体的には大乗仏教と密教が主流である。

密教は後期大乗の範疇と捉え大乗仏教の延長線上とする考えもあるが、私は大乗仏教と密教とは区別して捉えたほうが双方の独自性がより明確になると思っている。また大乗仏教を代表する般若経は自らを第二の転法輪と標榜し、変革を自覚している。このことを踏まえて考えると、密教は第三の転法輪と解釈することができる。実際に大乗と密教とでは、互いの教理や実践に大きな相違点があること事実である。それ故、密教を大乗仏教の延長と見るより、むしる密教を新たな変革と捉えたほうが、双方の特徴をより明確に理解することができる。

大乗と密教

大乗仏教と密教との大きな相違点は、両者の目標が異なるところにある。もちろん慈悲や縁起の理念は両者とも基盤とするところであるが、仏教を捉える視点を見ても大きな違いが見受けられる。

視点の置きどころが違っていれば、教理や実践に大きな差異が生じるのは当然のことである。言うまでもないが新たな仏教運動を推進するためには、必ず釈尊の一生を深く見つめなおし、仏道にはずれないように心がけている。そのなかで何よりも重要視していることは「釈尊が体現した悟りの事寒と、「その悟りを自身に留めおくのではなく社会に向けて発信したこと」の二つである。この二つを大乗仏教と密教に照らしてみるとその違いが分かる。すなわち密教は釈尊が体得した「悟りを得るための実践」を重視したのに対し、大乗仏教は釈尊が菩提道場から立ち上がり「仏教の教えを社会に広める」その教化行動を選択したのである。だからといって大乗仏教は自己研鑽の道を捨てたのではなく、また密教も社会教化の姿

勢を持たなかったわけではない。換言すれば、大乗仏教は釈尊が四十五年間に亘って倦むこと無く実践した利他行の意義を重く受け止め、衆生救済活動こそが自分たちがなすべき第一目標と位置づけたのである。つまり大乗仏教は自らの成仏を目指すための実践修行に重きを置くのではなく、現実社会における衆生救済のための利他の実践を軸に据えたのである。具体的にいえば、出家者と在家者が一丸となって歩む「菩薩行」を大乗仏教の基盤としたのである。そしてこの大乗菩薩行は地域宗教に止まらず、世界に広げる原動力となったのである。

※全文(ダイジェスト版)は『佛教文化』第219号で紹介しています。
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