「禅に学ぶ」に参加して
第32期生 M.N.
今回の修行体験では私にとって初めての経験が沢山あった。禅宗には関心があったが実際に坐禅体験をしたこともなく、以前テレビで見た雲水の修行光景を思い出しながら道場へと向かった。初回研修であり不安と緊張感を持ちながらのスタートであった。そんな緊張感をも忘れさせられるように人生初めての坐禅の時間が始まった。和尚の指導のもと外見上での形はすぐに作ることができたが、流れる時間の中で視線や呼吸を意識してしまうことで心身の乱れを体感した。しかし繰り返し行う中で呼吸をしている感覚すら忘れていることに気がついた。物音や物陰に左右されてしまうこと自体が「黙」になれていないのだと感じていたが、呼吸へ無意識を覚えた時に少しだけ坐禅を実践できたように思った。実に浅はかであるがブッダが瞑想し続けた時間と姿は想像を絶することであると体感した。
食事作法についての体験も大変貴重な経験となった。これまたテレビで見たことがあった光景ではあったが実践することは本当に苦戦した。食することへの感謝の気持ちを持ち行動すること、音を立てないよう整えいただくこと、ひとりひとりに速やかかつ丁寧に届けること、食する速さなど全てにおいて緊張感をもっての実践であった。食事の最後に沢庵とお茶で持鉢に食事を残さず食することは、幼い頃に祖母が行っていた姿も思い出し、食や人への感謝の思いも重なった経験であった。
学監からのお言葉の中に〝なりきること、工夫すること〟とあった。それをもとに行動することを心がけて過ごした三日間であった。到達の程度は自身の満足度に過ぎないが、終了後研修センターから車を運転し数十分で見慣れた地に戻ったはずが、その全てに新たまりを感じた。研修で集中し「黙」を体感できたのだと感じ、貴重な経験であったことを改めて実感した。有り難うございました。